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今日のアフリカ

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『ホテル・ルワンダ』主人公に懲役25年の判決

2021/09/21/Tue

 ルワンダの裁判所は、20日、ポール・ルセサバギナ氏に対して、「テロリズム」その他の罪で懲役25年の判決を下した。彼が武装組織「国民解放戦線」(FLN)を創設し、資金を提供し、機材を購入したと判断された。FLNは2018年にルワンダ南西部で襲撃事件を起こし、住民を殺害しており、これに対する責任が問われた。
 ルセサバギナは、2004年に公開され大ヒットした映画『ホテル・ルワンダ』の主人公のモデルとして知られる。ベルギー国籍と米国の居住権を持ち、現ルワンダ政権の強権性を強く批判してきた。彼は、政治的意図を持った裁判だとして審理への出席を拒んでおり、20日は本人欠席のまま判決が下された。ヨーロッパ議会、ベルギー、人権団体も裁判を懸念しており、判決を受け、ベルギー外相は「公正な裁判を受けていない」と批判した(20日付AFP)。
 ルセサバギナは、RPF政権が内戦に勝利した2年後、1996年に脅迫を受けてベルギーに出国した。家族によれば、彼の人望を妬んだ政権筋との関係がこじれたのだという。ベルギーではタクシー運転手の職に就いていたが、『ホテル・ルワンダ』が公開されると一躍ヒーローとして脚光を浴び、ブッシュ米大統領から勲章を授与されるに至った(19日付ルモンド)。著名になってからも、講演などの機会に現政権批判を繰り返していたが、特に憲法改訂を経て、2017年にカガメ大統領の長期政権が確定して以降、政権批判のトーンを上げたという。
 2020年8月、おそらくはルワンダ政府の策略にはまり、ルセサバギナはドバイからキガリへ連行された。裁判の中で、彼はFLNに対する自身の影響力を否定している。結審前、ルワンダの最高刑である無期懲役が下されるとの見方が一般的だったので、国内では比較的抑制された判決だとの見方がある。しかし、彼の家族やヨーロッパ諸国にとって、この裁判はもとより受け入れられないものである。
 ルワンダは、国内外の反政府勢力を徹底的に抑圧してきた。今回の事件もその一環である。ルワンダ研究者でHuman Rights Watchにも所属するロングマン(Timothy Longman)によれば、国外のルワンダ反体制勢力は政権による取り締まりを恐れて活動を抑制している。