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今日のアフリカ

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ブルキナファソ新政権のゆくえ

2022/10/08/Sat

 9月30日のクーデタを指揮したイブラヒム・トラオレが、5日正式に大統領に就任した。今後、「国民集会」(Assises nationlales)で移行期の大統領を任命する予定で、それまでの間国家元首を務めるという位置づけである。トラオレは34歳で、チリのボリッチ大統領(36歳)を抜いて世界一若い国家元首になった。
 このクーデタは、イスラーム急進勢力(ジハディスト)との戦いが失敗を続ける中で起こった。トラオレは、ジハディストとの戦いの前線である北部の街カヤ(Kaya)の砲兵連隊長であった。ブルキナファソではジハディストの支配領域が国土の4割に達し、前政権のダミバ中将に対しては、亡命中のコンパオレ前大統領を招いて和解を演出するなど、「テロとの戦い」に本腰を入れないという批判と不満が若手将校に広がっていた。今回のクーデタには、軍内の階級間、世代間の対立が反映されている(3日付ルモンド)。
 今後の動向で注目されるのは、フランスとの関係である。クーデタ発生時に、ダミバ中将がフランス大使館に逃げ込んでいるとの噂が流れ、首都ワガドゥグのフランス大使館と第二の都市ボボ・デュラソのフランス文化センターが襲撃された(1日付ルモンド)。また、反仏、反Ecowasのデモが頻発し、ロシアとの関係強化が叫ばれている。民衆の間に表出している反仏感情は、「テロとの戦い」に無策だという憤りと結びついている。
 反乱軍は当初ロシアへの接近を窺わせたが、その後トラオレは「フランスも、ロシアも自分たちのパートナーだ」という言い方に変わった(3日付ルモンド)。すぐにロシア側に走ることはないとしても、フランスの対応は極めて難しい。ブルキナファソは現在フランス軍が駐留するが、マリのように関係が悪化し、駐留ができなくなる可能性も考えられる。サヘル地域のイスラーム急進勢力との戦いは、当面先が見えない状況が続きそうだ。
(武内進一)