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今日のアフリカ

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ケニア大統領選でルトの勝利確定

2022/09/07/Wed

 9月5日、ケニア最高裁判所は、8月9日に実施された大統領選挙結果に関するオディンガの訴えを退け、ルトの勝利を全員一致で確認した。オディンガは、不満を表明しながらもこの判決を受け入れた。これで、今後5年間、ルトがケニアの最高指導者となることが確定した。
 今回の選挙戦では、現職のケニヤッタが副大統領のルトではなく、かつてのライバルであるオディンガを支援する構図となった。ルトは、二世政治家のケニヤッタやオディンガを「王朝」だと批判し、自分は貧困層の出身であり、「たたき上げ」の「アウトサイダー」だと強調した。
 オディンガ有利との事前報道があったが、8月15日に選挙委員会(IEBC)委員長がルトの勝利を発表した。ルトが50.49%、オディンガが48.85%の得票率であった。しかし、同日IEBCの7人の委員のうち4人が別の場所で会合を開き、「開票手続きに不透明さがあった」として、委員長が発表した結果を否定したことから疑惑が広がった。8月22日、オディンガは最高裁判所に異議を申し立て、その判断が待たれていた。
 前回(2017年)の大統領選挙でも選挙結果への異議が最高裁に持ち込まれ、結局、選挙のやり直しが命じられた。しかし、今回は最高裁が一致して選挙結果を認める結末となった。
 今回、ケニア最大のエスニックグループであるキクユ人の居住地域(ケニア山地域)でカレンジン人のルトが圧勝したことを受けて、エスニックなファクターが重要性を失ったとの意見も報じられた(8月20日付ファイナンシャルタイムズ)。ケニヤッタがキクユ人からの信頼を失っていたことはおそらく疑いないが、副大統領のガチャグア(Rigathi Gachagua)はこの地域を地盤とするキクユであり、エスニックなファクターは依然一定の重要性を持ったであろう。
 大きな暴力なく新たな大統領を選んだケニアの民主主義は評価されるべきである。とはいえ、本当の評価はこれから5年間の成果による。債務問題など課題は多いが、スタートアップ企業が活発に活動し、地熱発電などの有望な再生可能エネルギー源を有するケニアの潜在力には世界が注目している。民主主義の観点からも評価を高めてほしい。
(武内進一)