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今日のアフリカ

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米国務長官のアフリカ歴訪

2022/08/13/Sat

 ブリンケン米国務長官は、7日から12日にかけて南アフリカ、コンゴ民主共和国、ルワンダを歴訪した。同氏は昨年11月にはケニア、ナイジェリア、セネガルを、今年3月にはモロッコ、アルジェリアを訪問している。
 今回訪問した3カ国は、それぞれ米国にとって重要な意味を持つ。南アでブリンケン氏は、ソウェト蜂起(1976年)の記念碑に献花し、対等な関係に基づく新たなアフリカ政策を約束した。南アフリカは3月2日の国連における対ロシア非難決議で棄権するなど、ウクライナ侵攻に際して欧米から距離を取るアフリカの立場を代表している。今回の南ア訪問の背景には、自国の行動がアフリカ諸国から十分な理解を得られていないとの米国の認識(危機感)がある。
 折しも、7月末にはロシアのラブロフ外相がエジプト、コンゴ共和国、ウガンダ、エチオピアを歴訪し、エチオピアでは、アメリカが支配する世界秩序を支持しないよう記者会見で訴えている(7月28日付ルモンド)。米国が南アに接近する動機はよくわかる。
 コンゴとルワンダへの訪問は、M23反乱による両国の緊張を受けてのものである。ルワンダのM23への支援を指摘する国連専門家委員会報告書がリークされた直後だけに、ブリンケン氏の発言が注目されたが、この点に関する明確な非難はなかった。コンゴ国内には、対応が不十分だとの意見もある。
 一方で、今回の訪問から米国のコンゴ重視の姿勢、そしてルワンダへの圧力を読み取る向きもある(12日付ルモンド)。米国要人のコンゴ訪問は2014年以来である。コンゴは近年中国との関係を深めてきたが、コバルトなど希少鉱物資源産出国としてのコンゴの重要性は、米国にとって高まっている。
 逆にルワンダに対しては、人権面の懸念が米国内で表面化している。具体的には、2020年に逮捕され、翌年に懲役25年の実刑判決を受けたポール・ルセサバギナ氏(『ホテル・ルワンダ』主人公のモデル)に関する懸念であり、今回のブリンケン氏の訪問時にも議題に上った。記者会見で同氏は、人権尊重に関して「深刻な懸念」を表明した。米国内には、対ルワンダ援助の全面的見直しを求める声も出ている。
 アフリカに対して無関心だったトランプ政権期と比べ、バイデン政権ではアフリカへのアプローチが目立つ。政権の性格だけでなく、中国の存在感の高まりやロシアによるウクライナ侵攻など、国際情勢がそうした対応に向かわせているのであろう。