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今日のアフリカ

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なぜ南アフリカは対ロシア非難決議を棄権したか

2022/05/28/Sat

 ロシアのウクライナ侵攻に際して、アフリカの多くの国々は国連での非難決議に賛成しなかった。南アフリカもそうした国々のひとつである。この件に関して、5月16日付の南ア紙Daily Maverickに同国の国際関係・協力副大臣のAlvin Botesが寄稿し、自国の立場を明確にしている。その主旨をまとめれば、次のようになる。
 ウクライナ紛争は、覇権をめぐる大国間の代理戦争である。その意味で、イラク、アフガニスタン、ユーゴスラビアの紛争と同じである。こうしたなかで、大国は国際法違反を犯しても、国連の制裁を受けてこなかった。西側外交官からは、「ウクライナ紛争は他の戦争よりも悪い。なぜならロシアは『専制的』な国家であり、それが『民主的』なウクライナを侵攻しているからだ」という声が聞こえてくるが、ここにはレイシズムが含まれている。第二次世界大戦後に軍事侵攻を受けた国のほとんどは、アジア、中東、アフリカ諸国なのである。政府が民主的でなければ攻撃に値するとでもいうのだろうか。南アフリカは、ウクライナ戦争に中立的な立場を取っているのでなく、覇権争いをする大国とは一線を画す非同盟運動(Non-Aligned Movement)の立場を取っている。ウクライナ戦争とイラク、アフガニスタン戦争とは、大国が侵攻し不処罰がまかり通るという意味で本質的に似ている。
 同様の趣旨は、4月にも同国のNaledi Pandor国際関係・協力相によって表明されている。同相は、国連決議を棄権した南アの姿勢は非同盟運動のアプローチであり、イスラエルがガザを軍事攻撃し殺戮と破壊を繰り返したとき、国際社会がウクライナへの侵攻時と同じことをできないというのはダブルスタンダードだと述べた(4月8日付Daily Maverick記事)。
 もちろん南アはロシアの侵攻を支持しているわけではない。どの国の主権や領土も同じように尊重されるべきだとして、ウクライナとパレスチナやアフガニスタンとの異なる対応を批判しているのである。1955年のバンドン会議に起源を持ち1961年に発足した非同盟運動が、今回の紛争のなかで行動の指針として言及されていることに、我々は注意を払わなければならない。