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今日のアフリカ

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ロシアのウクライナ侵攻とアフリカ

2022/03/06/Sun

 2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は、アフリカにも甚大な影響を与えている。ウクライナには8万人のアフリカ人(ほとんどは留学生)がいたと推計されるが、彼らの退避と帰国が緊急の課題となった。国境で差別的な扱いを受けたとの報道もある。
 中期的に懸念されるのは、食料、エネルギー価格の高騰である。特に北アフリカ諸国にはロシア、ウクライナからの小麦輸入に依存している国が多く、価格高騰が脆弱な経済に打撃を与える恐れが強い。現在急騰している石油価格の影響も同様に懸念される。
 一方、3月2日の国連総会におけるロシア非難決議の際に明らかになったのは、アフリカの多くの国が賛成票を投じなかったことである。エリトリアが反対、アンゴラや南アフリカなど17カ国が棄権、ブルキナファソやモロッコなど8カ国が投票しなかった。54の加盟国のうち、26が賛成しなかったわけである。この理由は各国それぞれである。中央アフリカのように、ロシアの民間軍事企業ワグネルから傭兵を受入れ、首都バンギでロシアの行動を支持するデモが起こっている国もある(3月5日付Radio France Internationale)。南アフリカはBRICsの枠組みでロシアと従来から関係が深く、またラマポサ政権の「親西側」のスタンスを批判する勢力に配慮したと言われる(3月4日付Africa Confidential)。
 ロシア侵攻が開始された2月24日、AUはロシアに国際法を守るよう声明を出した。しかし、AU議長国のセネガルは、国連総会決議では棄権した。ルモンド紙は、外交筋の情報などから、1)ロシアからサイバー攻撃などを仕掛けられる恐れ、2)西側に追従する姿勢を批判する国内野党勢力への配慮、という2点を挙げている(3月4日付)。こうした状況は、多くの国に一定程度共通する。マリで典型的に見られた反仏感情は、西アフリカ諸国に広まっているということである。
 ウガンダは「非同盟諸国運動」の次期議長国であることを理由に棄権したが、国内では、ムセヴェニ大統領の息子のカイネルガバ(Muhoozi Kainerugaba)将軍が「プーチンは完全に正しい」、「人類の大半はウクライナに対するロシアの姿勢を支持している」とツイートしたと報じられている(4日付ルモンド)。
 この状況をどう解釈するかは慎重に分析すべき問題である。ロシアはアフリカに対して突出した武器輸出国であり、またRT(Russian Today)などメディアもかなりの国に浸透している(4日付AC)。また、アフリカでは、植民地支配などの経験から、西側の偽善に対する感覚も敏感である。いずれにせよ、今回の国連決議に対するアフリカ諸国の対応は、現時点での彼らの「感覚」を示したものであり、今後それがどう変化するのか、しないのかが注目される。