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今日のアフリカ

今日のアフリカ

アフリカの天然ガス

2022/04/10/Sun

 天然ガスの主要供給国ロシアへの制裁が強まるなか、代替供給先をめぐる議論が熱を帯びている。EU諸国は天然ガス供給の4割をロシアに依存しており、代替供給先の確保が急務である。こうした文脈で、アフリカに注目が集まっている。7日付ルモンドのドゥ・ヴェルジェス(Marie de Vergès)のコラムは現状を簡便にまとめていて興味深い。
 ウクライナ危機のなか、食料やエネルギー価格の高騰のために打撃を受けているアフリカ諸国は多い。一方で、経済的好機になる可能性もある。3月下旬、アフリカ開発銀行のアデシナ総裁は、「ヨーロッパは天然ガスの代替調達先を探しているが、それはアフリカだろう」と述べた。総裁の祖国ナイジェリアは、アフリカ最大の天然ガス供給地のひとつである。
 天然ガス調達をアフリカに求める動きは既に始まっているが、ウクライナ危機を受けて改めて注目を浴びている。ニジェール経由でナイジェリアとアルジェリアを結ぶ、4000キロのガスパイプライン計画はその一つである。計画自体は10年以上前からあったが、この2月に工事が開始されたという。既にヨーロッパのガス供給量の11%を占めるアルジェリアはもとより、アンゴラやモザンビーク、セネガルやタンザニアといった国々にも注目が集まっている。
 しかし、天然ガス鉱脈の存在は、機会であっても解決策ではない。インフラは老朽化し、パイプラインが攻撃される危険性は高い。ナイジェリア南部における石油パイプラインの破壊はよく知られているし、モザンビークではジハディストの攻撃のために天然ガス開発が中断された。これまでアフリカで、幾度となく「資源の呪い」が指摘されてきたことに注意を向けるべきだ。
 天然ガスをめぐっては、ウクライナ危機の以前から報道が目立つようになっていた。ヨーロッパ諸国での危機感がそれだけ強いということだろう。それがどのような形でアフリカに影響するのか、注視する必要がある。