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今日のアフリカ

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マリがワグネルに接近

2021/09/26/Sun

 25日、国連総会に際しての記者会見で、ロシアのラブロフ外相は、マリがロシアの民間軍事企業ワグネルにアプローチしていることを認め、ロシア政府とは関係のないことだとしつつも、正当な政府による正当な交渉だと擁護した(26日付ルモンド)。ワグネルは、プーチン大統領に近い実業家のプリゴジンが出資する企業で、アフリカではリビアや中央アフリカに傭兵を派遣して軍事活動を展開している(詳細は、廣瀬陽子『ハイブリッド戦争』講談社現代新書、2021年)。
 マリによるワグネルへの接近は9月半ばに公けになり(9月15日付ルモンド)、ヨーロッパ諸国の反発を招いてきた。特に仏独は、ワグネルと契約するなら、ジハディスト勢力を対象とした軍事面での協力関係を見直すと警告しており、20日にはパルリー仏軍事相がマリを訪問し、この警告を直接政権に伝えた。
 一方、マリの首都バマコでは、22日、クーデタを引き起こした軍部を支持し、フランスの関与を批判するデモが展開された(23日付ルモンド)。これは官製デモであろうが、その中でロシアの介入を求める声も聞かれた。フランスの介入を批判し、ロシアの支援を求める声は、2020年8月のクーデタ以前からある
 25日の国連総会演説で、マリのマイガ首相は、フランスによるバルカンヌ作戦の縮小に関して、パートナー国にあるべき相談がなかったと批判した。ロシアのラブロフ外相も、フランスがマリから手を引くので、彼らがワグネルにアプローチしたのだと述べて、要はフランスの責任だとの姿勢を示している。
 クーデタで成立した軍事政権が、自国の安全保障を確保するために、注文の多い民主主義国からの支援を嫌って民間軍事企業に依存しようとするのは、ありうることだ。傭兵は戦時の行動を規定する国際法に従わず、アカウンタビリティが全くない。ワグネルに関しても、拷問や処刑など数多くの人権侵害が指摘されている。フランスとしても、妥協は難しいところである。