3日、フランス軍事省は、マリにおける事実上のクーデタへの制裁措置として、同国がサヘル地域で展開している軍事作戦「バルカンヌ作戦」とマリ軍との協力を停止すると発表した。
5月24日、マリ軍は移行政権の大統領と首相を逮捕、解任した。28日には、憲法裁判所が、副大統領のゴイタ(Assimi Goïta)大佐を国家元首と認める決定を下した。ゴイタは昨年8月のクーデタを指揮した軍の指導者だが、自らが移行政権の主導権を握る姿勢を明らかにしたと言える。
これに対して、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)は30日にマリを資格停止とし、アフリカ連合(AU)も6月1日に、「通常の立件秩序が回復するまで」の期間、同様の措置を取ることを決めた。軍事協力に関しては、米国がクーデタ直後に停止を決めたのに続き、上述の通りフランスも3日に制裁に踏み切った。
マリではイスラム急進主義が北部、中部で勢力を拡大しており、国際社会も苦渋の判断を迫られた。フランスも「一時的、回復可能な形で」の軍事協力停止を発表している。もっとも、実際の戦闘においては、マリ軍はあまり役に立たず、フランス軍はもっぱらチャド軍の支援を得ていたといわれる(4日付ルモンド)。マリ国家が正当性を持った形で存立しなければ、サヘル地域における政治的安定はあり得ないという危機意識を示すための制裁と言える。
ゴイタをトップとする暫定政権は、市民社会の運動体であるM5-RFPに首相を委任する意向で、マイガ(Choguel Kokalla Maïga)の就任が有力視されている。M5-RFPでは、イスラム急進主義勢力との対話に前向きなディコ(Mahmoud Dicko)師の影響力も強く、フランスが懸念を持っていると報じられている(4日付ルモンド)。マリの市民集会では近年、フランスに敵意を示し、ロシアの関与を求める声が目立つようになっている(5月31日付ルモンド)。市民社会から首相を出すことが政治的安定につながるかどうかは、現時点では何とも言えない。