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今日のアフリカ

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権威主義体制下の大統領選挙

2021/04/11/Sun

 今年に入り、アフリカの幾つかの国で大統領選挙が実施されたが、しばしばその権威主義的性格が露わになっている。1月14日のウガンダ大統領選挙ではムセヴェニが当選したが、対立候補のボビー・ワインに対する露骨な抑圧によって世界的な批判を浴びた。ボビー・ワインは、大統領選挙活動中に、11回逮捕拘留され、4回銃撃されたという(1月12日付FT)。ムセヴェニは、1986年に内戦で政権を獲得して以来ウガンダ国家元首の地位にあり、在任期間は35年になる。
 3月21日にはコンゴ共和国で大統領選挙があり、現職のサスー=ンゲソが当選した。サス―は、1992年から97年を除いて、1979年以来大統領職にある。彼もまた、対抗候補を徹底的に抑圧して権力を維持してきた。4月9日には、ジブチで大統領選挙が実施され、現職のゲレーが97%の得票率で5選を果たした。ゲレーは、1999年に、1977年の独立以来元首の座にあったオジを引き継いで1999年に大統領に就任した経緯があり、ジブチは独立以来40年以上にわたって一族の支配が続いていることになる。
 4月11日は、チャドとベナンで大統領選挙が実施される。チャドもまた、現職のデビィが1991年以来大統領の座にあり、6期目の当選が確実である。野党に対する弾圧のため、主要な候補は選挙をボイコットした。4月7日にはアムネスティ・インターナショナルが治安部隊による過度な弾圧を批判する報告書を刊行している
 ベナンでは、2016年に当選したタロン現大統領の下で、権威主義化が進んだ。ベナンは1991年に民主化した後、政治的自由度が高い国として知られてきたが、タロン政権下では有力な野党政治家が、不正資金疑惑や選挙違反などの名目で次々に失脚させられた。野党のボイコットのために、議会は与党がすべての議席を握っている。タロンは「開発」をスローガンに支持を呼び掛けているが、タロンの政治手法を支持する有権者もいる。4月10日付ルモンドは、「民主主義はベナンの弱さだった。野党にカネが流れただけだ」という声を紹介している。
 アフリカでは、1990年代に民主化が急速に進展したが、2000年代半ば以降はその退潮が顕著になっている。憲法を改正して任期制限を撤廃するケースも多く、ウガンダ、チャド、ジブチ、コンゴ共和国などはいずれもその例である。一方、ベナンのように最近になって権威主義的傾向を強めている国もある。民主主義の危機は世界的な水準で語られるが、アフリカもまたその例に漏れない。