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今日のアフリカ

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ウガンダで総選挙始まる

2021/01/14/Thu

BBCの報道によれば、1月14日、ウガンダで総選挙が始まった。1800万人のウガンダの有権者による大統領と国会議員を選出する選挙が行われる。大統領選では、35年間、大統領の座にいる現職のムセヴェニ大統領に対し、ミュージシャンから政治家に転身した対立候補のロバート・チャグラニ(芸名:ボビー・ワイン)氏がどこまで迫れるかが注目されている。大統領選は、現職のムセヴェニ大統領を含めた11人の候補者によって争われ、有効投票数の過半数を獲得した候補者が次期大統領に選ばれる。いずれの候補も過半数に満たない場合は、決選投票となる。

大統領選で優勢とみられているのが6期目を目指す現職のムセヴェニ大統領である。76歳のムセヴェニ氏は、1986年に国民抵抗運動(National Resistance Movement: NRM)を率いて政権を奪取して以来、アフリカでは在任期間がもっとも長い大統領の一人となっている。国内の治安維持や経済発展に一定の役割を果たしてきたという評価を受けている一方、失業率の高さや汚職の蔓延などに対する批判も根強い。ムセヴェニ大統領は、農村部では一定の支持を集めているとみられている一方、有権者の多くを占める若者からの支持は高くないとみられている。

10人の対立候補のうち、もっとも注目されているのが、38歳という若さのロバート・チャグラニ(芸名:ボビー・ワイン)氏である。スラム出身のチャグラニ氏は、2000年代初めに、ミュージシャンとして若者の間で人気を集めた。2017年に国会議員として初当選した後は、「ゲットーの大統領」という愛称で、社会の変革を求める若者から絶大な支持を集めている。大統領選では、自らが率いる野党、国民統一プラットフォーム(National Unity Platform: NUP)から出馬した。選挙運動では、「人々の力(People Power)」を合い言葉に、独裁政権の打倒と社会正義の実現を目指して活動を続けてきた。

今回の総選挙に向けた選挙運動では、警察による対立候補者に対する選挙妨害が相次いで報告された。とくに、有力な対立候補とみられるチャグラニ氏に対する警察の介入は激しかった。11月18日には、コロナウイルス感染症対策を講じなかったとして、警察は選挙活動中に同氏の身柄を拘束した。その後、彼の逮捕に抗議する若者と警察との間で衝突が発生し、多数の逮捕者と約50名の死者が出ている。放後に、彼は選挙運動を再開したものの、12月には彼の支持者と警察との間で発生した衝突によって彼が乗る選挙カーにゴム弾が撃ち込まれるという事件が発生した。こうした事件にもかかわらず、彼はいかなる暴力や威嚇にも屈しないという姿勢を貫き、選挙運動を続けてきた。

選挙当日が近づく1月11日、治安部隊を乗せた車列がカンパラの中心街を移動する光景がみられ、市内は物々しい雰囲気となった。また、国内では全てのソーシャルメディアが政府によってブロックされた。選挙当日を迎え、カンパラ市内では暴動に備えて警察が市内を循環するなど警備を強化している。

ヨーロッパ連合(EU)やアメリカは、ウガンダ当局がこれまで選挙監視団の勧告を無視してきたことを理由に、今回の総選挙に選挙監視団を派遣しないことを表明している。現職と対立候補の争いが激しさを増すなかで、今回の選挙がどのような結果をもたらすかが注目される。