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今日のアフリカ

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エチオピア北部における紛争拡大の危機

2020/11/11/Wed

11月10日付のAljazeeraによれば、エチオピア北部、ティグライ州における連邦政府軍とTPLFとの戦闘は拡大しており、数百人の犠牲者が出ているのではないかとみられている。6日の「今日のアフリカ」でふれたように、両軍の軍事衝突は、4日に始まった。

エチオピア国営放送の発表によれば、9日にエチオピア政府軍(Ethiopian National Defense Force)は、ティグライ州でTPLFに対して空爆を行い、10日にティグライ州の町ヒメラ近郊の空港を奪取した。ヒメラは、エリトリアとスーダンとの国境近くに位置する。ティグライ州は、依然として通信網が遮断されており、政府発表が正しいかどうか確認することは難しい状況にある。

戦闘が続いているとみられるティグライ州西部からは、スーダンに向けて数千人の難民が国境を越え始めている。エチオピアに隣接するスーダン政府の州知事によれば、難民は時間が経つごとに増加しており、2日間で2500人以上に上る。スーダン政府は、国境に難民キャンプを準備しはじめたほか、6000人の部隊を派遣した。

一方のTPLFは、デブレチオン議長(ティグライ州知事)が、ローカル放送をつうじて声明を発表し、隣国のエリトリアが国境を越えてティグライ州内に侵攻したと批判した。エリトリア政府はこの声明を否定している。アビィ首相は、2018年4月の政権樹立後、これまでエチオピアと対立していたエリトリアとの関係修復に努めてきた。同年9月には、20年ぶりに国境の往来が再開されている。これに対し、TPLFは、アビィ首相がエリトリアとの関係を深めることに警戒感を示していた。

また、10日付のAljazeeraでは、ティグライ州に隣接するアムハラ州において地域住民が政府側に立ってTPLFとの戦闘に備える動きを見せていると伝えている。ティグライ人とアムハラ人は、土地をめぐって係争関係にある。このため、ティグライ州内の戦闘が他の州に波及するおそれが出てきている。

アフリカ連合(Africa Union: AU)のムーサ・ファキ委員長は、9日、エチオピア政府とティグライ州当局の双方に対して即時停戦を呼びかけた。これに対し、アビィ首相は、10日、今回の軍事作戦は法的処置であり、犯罪的な軍事政権が武装解除し、合法的な行政が回復され、逃亡者が捕まるまで行われる、とツィッターで反応した。一方のTPLFは、内戦を避けるためにAUが介入するよう求めている。

エチオピア北部における紛争は、政府軍の軍事作戦が短期間で終わるのか、それともTPLFによる抵抗により紛争が長引くのか不透明な状況にある。仮に紛争が長引けば、周辺国や国内の他の州に紛争の影響が及ぶおそれがある。