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今日のアフリカ

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エチオピア北部における軍事衝突の発生

2020/11/06/Fri

11月5日付のBBCによれば、エチオピアのアビィ・アハメド首相は、国営TV放送を通じて、ティグライ州の地域政党、ティグレ人民解放戦線(Tigray People's Liberation Front: TPLF)が政府軍の基地を攻撃したことに対し、同州に政府軍を派遣し、軍事作戦を開始したと発表した。エチオピア政府は、同州に6ヶ月の非常事態宣言を発令し、電気、携帯電話、インターネットサービスを閉鎖した。一方、ティグライ州知事のデブレチオン・ゲブレミカエルは、ローカルTV放送を通じて、同州は戦争状態にあり、TPLFは政府軍との戦闘を継続すると述べた

エチオピア政府によれば、4日朝、TPLFが政府軍基地を襲撃し、武器を奪おうとしたことで戦闘が発生し、政府軍に犠牲者が出た。政府は、TPLF兵士は隣国エリトリアの軍服に似た服装をしているが、これはエリトリアが襲撃してきたとみせかけるためのものだと批判している。一方のTPLFは、基地からほとんどの武器を手に入れ、アムハラ州に近いティグライ州西部で政府軍と戦闘を行っていると発表した。ティグライ州の州都、メケレでは、4日朝に銃声が聞かれたが、その後は平穏を取り戻していると伝えられている。

アビィ政権とティグライ州との対立は、2018年4月のアビィの首相就任以来続いている。アビィ政権以前、TPLFは1991年から17年間続いたエチオピア人民革命民主戦線(Ethiopian People's Revolutionary Democratic Front:EPRDF)政権の中枢を担ってきたが、アビィ政権の下でEPRDFが繁栄党(Prosperity Party: PP)に再編されると、PPへの参加を拒否した。また、アビィ政権下で、ティグライ人の高官の拘束や罷免が行われたこともあり、TPLFの政治的影響力は弱まりつつあった。

これに対して、ティグライ州では連邦政府への反発が強まっていた。ことし9月にコロナウイルス感染症拡大を理由に、政府が予定されていた総選挙を延期した際には、ティグライ州は政府の命令に反して州議会選挙を実施した。アビィ政権は、この選挙自体を違法とみなしており、両者の緊張関係は高まっていた。

政府軍とTPLFとの軍事衝突については、国内の情報統制により不明な点が多いものの、双方とも軍事作戦を続行する意志を示しており、武力衝突の激化が危惧される。