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今日のアフリカ

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マリのクーデタ続報

2020/08/20/Thu

 クーデタから1日経ち、状況が徐々に明らかになってきた。ルモンド等の報道に依拠して、現状をまとめておく。
 19日、クーデタの首謀者が記者会見を開き、人民救済国家委員会(Comité national pour le salut du peuple:CNSP)の樹立を発表した。指導者として、Assimi Goita大佐の名が挙がっている。CNSPは、政治権力が目的ではなく、政治の安定が目的だと説明し、早期に選挙を実施する意向を明らかにしている。ここ数か月間、大統領辞任を求めてきた反政府勢力M5-RFPとも協議を開始したと伝えられる。M5-RFP側も、軍との協議に前向きの姿勢を示している。
 一方、国際社会は厳しいまなざしを向けている。マクロン仏大統領は、「テロとの戦いと民主主義・法の支配の保護は切り離せない。それを逸脱することは、我々の闘いを弱めることだ」と述べて、クーデタを厳しく非難した。AUとECOWASは、マリを即時資格停止処分にした。隣国コートジボワールは、国境を封鎖し、資金移動を止める制裁措置を課している。ポンペイオ米国務長官も、法に則った国家再建を求める声明を発表した。
 CNSPは、前政権の汚職や治安面の無策を厳しく非難するとともに、国際社会に対しては継続性をアピールしている。北部に展開する国連平和維持部隊Minusma、駐留するフランスのバルカンヌ作戦、近隣諸国とのG5サヘルといったジハディスト集団に対する軍事的コミットメントに対しては、マリがこれまでと変わらぬパートナーであることを強調している。
 ケイタ前大統領の評判は国内外で悪かったが、とはいえクーデタによる政権転覆を国際社会が認めることはできない。軍の現在の姿勢が維持されるなら、選挙に向けた交渉が始まることになろう。マリにおいて反仏感情が高まっていることを考慮すると、軍が政権を手放した後に誕生する文民政権は、フランスと距離を置く政策をとる可能性もある(ファイナンシャルタイムズ紙)。今回のクーデタがサヘル地域の治安情勢にどのような影響をもたらすかは、なお不透明である。