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今日のアフリカ

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ベルギー国王がコンゴの植民地支配を謝罪

2020/07/04/Sat

ベルギーのフィリップ国王は、6月30日、コンゴ民主共和国の独立記念日にあわせてチセケディ大統領に書簡を送り、コンゴでの植民地期の行為を深く悔いるとの声明を発出した。コンゴ自由国時代(1885~1908)、ベルギー領コンゴ時代(1908~1960)の双方について、深い悔恨の念を表明した。2013年に即位したフィリップ国王は、「あらゆる人種差別と闘う」ことを表明し、この問題への議論を深めることを促した。
 ベルギーとコンゴの関係に関しては、植民地期に、混血児をコンゴ人の母親から引き離し、ベルギーに連れてきて教会施設などで養育した行為について、2019年4月にミッシェル首相(当時)がベルギー議会で謝罪している。また、この件については、当事者から訴えが起こされている。
 今回の国王の謝罪声明は、5月以降米国をはじめ世界各地で展開されている「ブラック・ライブズ・マター」(BLM)運動を意識した内容となっている。運動が引き起こした抗議デモの中で、コンゴ自由国時代の国王レオポルドII世の銅像が攻撃の対象となったことも、謝罪の背景にあると言えよう。
 謝罪を受けて、チセケディ大統領は沈黙を守り、遅れてコンゴの外相は歓迎する声明を出した。コンゴのカトリック司教団体も歓迎声明を出している。一方で、政府に批判的な市民団体Luchaからは、謝罪だけでなく賠償を要求する声が上がっている(6月30日Radio France Internationale)。初代大統領カザヴブの娘であるジュスティーヌ・カザヴブは、声明が「偽善的」であり、ベルギーの政治家はさらなる自己批判が必要だと批判した(7月1日付ルモンド)。
 BLM運動の余波という側面があるにせよ、植民地支配を国王が謝罪したことを前向きに受け止めたい。過去の見直しは、こうした形で少しずつ進むのだと思う。