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今日のアフリカ

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カビラとチセケディの軋轢

2020/03/15/Sun

3月5日付アフリカ・コンフィデンシャル誌は、コンゴ民主共和国の前大統領カビラと現大統領チセケディ、両者が実権を握る二つの政党(FCCとCACH)の軋轢について指摘している。2018年末に行われた大統領選挙では、カビラ陣営が大掛かりな選挙不正を行い、「御しやすい野党候補」としてチセケディを勝利させたというのが通説である。したがって、チセケディ政権では、彼と彼が率いる与党のCACHと、隠然たる影響力を持つカビラおよび議会多数派のFCCとの軋轢が、折に触れて表面化してきた。
 それがわかりやすい形で現れるのは人事である。2019年1月に就任したチセケディの下で、組閣が完了したのは9月3日のことだった。閣僚ポストの調整に多大な時間を要したのである。重要な国営企業のトップ人事も同じで、2019年6月にチセケディが最大鉱山企業ジェカミンの理事長や社長を任命したところ、FCCに属する担当相が実施を拒否した。こうした流れで、チセケディは1月ロンドンで開催された投資サミットの際、必要があれば国会解散に踏み切ることもあると発言し、国会議長から厳しい反発を受けた。その後、チセケディは沈黙している。
 一方で、カビラは2月、英国の外交団と会談した際、チセケディが彼に直接連絡を取らず、スポークスマンを介して連絡してくるとして、不信感を表明した。カビラはまた、ハンマー(Michael A. Hammer) 米国大使についても批判した。同大使は、チセケディ政権に食い込み、政権が成功するにはカビラの力を弱める必要があると公言している。米国のチセケディ寄りの立場は、ハンマー大使だけではない。ファム(J. Peter Pham)米国大湖地域特使は、2月12日チセケディと面会し、DRC政府の汚職対策について不十分だと指摘した。これは、前政権に対する汚職調査を強めるようにとの圧力とも解釈できる。米国は会談の際、前政権への汚職捜査を進めるアンゴラを成功例として指摘したという。
 ただし、チセケディ政権が国際社会から強い信任を得ているとも言えない。IMFの対応はその一例である。IMFは、米国の要請を受け、昨年コンゴへの資金融資再開に向けて動き出した。IMFは慎重に6か月間の監査期間を設けたが、この間事態は進展していない。2月25日、IMFはコンゴ政府による中央銀行から借り入れ政策を批判し、この借入れを即時中止して既存の借入分を返済するよう声明を発表した。IMFはまた、チセケディが最初の100日間に設けた「緊急プログラム」の成果や、彼の外遊の多さにも不満を持っているとされる。
 チセケディは、カビラの影響力を弱めるために国際社会の支援を必要としている。ただ、そのために国際社会に受けがよい政策を実施すれば、国内の不満が高まる。このジレンマにチセケディは直面していると言えるだろう。