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今日のアフリカ

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コンゴ民主共和国のエボラとはしか

2020/01/11/Sat

2018年8月にコンゴ東部の北キヴ州で発生した感染症のエボラウィルス病は、流行のスピードこそ減衰したものの、依然として収束とは呼べない状況にある。2018年の発生時から数えて、1月8日時点で、2200人以上がエボラにより死亡した。
 東部コンゴでは、エボラ対策の関係者が襲撃される事件が頻発している。11月にはラジオを通じた対エボラ啓発に取り組んでいた活動家が襲撃、殺害された。こうした襲撃の被害者は2019年の1月から11月の間に300人を超え、6人が死亡、70人が負傷している(2019年11月5日付ルモンド)。エボラ対策関係者への襲撃について、国連エボラ対策コーディネーターのグレスリー(David Gressly)は、住民ではなく、犯罪者の仕業だと述べている(2019年12月4日付ルモンド)。エボラ対策が進まない理由として、住民の無理解、無知が挙げられることがあるが、エボラ対策関係者への攻撃は何らかの意図を持ったプロフェッショナルによって行われている可能性が高い。
 上記国連エボラ対策コーディネーターは、エボラ対策への深刻なダメージとして、昨年11月末、国連平和維持部隊MONUSCOを標的として起こった住民の暴動を挙げている。エボラ流行地の北キブ州ベニ近郊では、数年前から、一般住民がナタなどで惨殺される事件が頻発している。国連やコンゴ政府はこれを反政府勢力ADFの仕業としているが、明白な証拠はあがっていない。市民の保護を掲げながら、惨殺事件を防げないMONUSCOを批判し、国連事務所を標的とする暴動が11月末に起こったのである。これにより国連はベニ近郊で機能停止に陥ったため、エボラ対策にも甚大な影響が出た。
 一方、WHOは1月7日、コンゴにおいて、はしかにより毎年6000人が死亡しているとして、4000万ドルの追加支援を要請した。はしかはエボラほど注目されないが、6000人というのはエボラによる死者の2倍以上である。はしか対策には既に2760万ドルが投入されているが、その対象は主として5歳未満の乳幼児であり、対策を6~14歳の児童に拡大するために追加の資金投入が必要になるという。はしかの流行は、不十分なワクチン接種、低栄養、公共医療システムの脆弱性、医療施設へのアクセスの難しさなど、様々な要因による(1月8日付ルモンド)。はしかの場合、ワクチン接種に対する住民の抵抗は全くないという(1月8日BBC Africa Today)。
 疾病対策において、医薬品で解決できるのは問題の一部に過ぎず、それを取り巻く政治経済的要因がきわめて大きな影響を与えるというのは、よく指摘されることである。コンゴの事例は、まさにその点をよく示している。