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今日のアフリカ

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マリに対する国際社会の関与

2019/11/27/Wed

11月25日、マリ国内、ブルキナファソ、ニジェール国境付近のLiptako地域で作戦中の仏軍ヘリ2機が衝突して墜落。仏軍兵士13名が死亡した。これにより、2013年1月にオランド前大統領がマリへの軍事介入を決断して以来、仏軍兵士の犠牲者は41名となった。この地域では、11月1日にマリ軍基地が攻撃され兵士49人が死亡、また翌2日には仕掛け爆弾によって仏軍兵士1名が死亡している。これらの攻撃はいずれも「大サハライスラム国」(GSIS)が犯行声明を出している。マクロン大統領は、サヘル地域がイスラム急進勢力(ジハディスト)の手に落ちればヨーロッパへの移民・難民がその思想に染まる恐れがあるとして、その掃討作戦に高いプライオリティを置いている。
 フランスは様々な理由から、この地域の治安政策において多国間主義を重視してきた。結果として今日、様々な組織がサヘル地域の安全保障に関わり、複雑な様相を呈している。26日付ルモンド紙を参考に整理する。
 1)フランスによる軍事介入。2013年1月11日に開始された「セルヴァル」"Serval"(ヤマネコ)作戦。2014年8月1日に同作戦を引き継いだ「バルカンヌ」"Barkhane"作戦がこれにあたる("Barkhane"は「三日月型砂丘」の意味)。兵士1700人の規模で、マリ北部を占拠したジハディスト勢力の拡張、南進を抑えることを目的にしていたセルヴァル作戦に比べると、バルカンヌ作戦は対象地域をマリ、モーリタニア、ニジェール、ブルキナファソ、チャドに拡大し、現在部隊規模は4500人と、フランス最大の国外軍事作戦になっている。犠牲者も多く、2013年以来41名の兵士が死亡した。
 2)「 G5サヘル」。2015年11月、モーリタニア、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、チャドの首脳がサミットで、ジハディストと戦うための共同軍設立を決定。フランスがこれを支援して具体化した。フランスは、「G5サヘル」をアフリカによる治安問題解決のモデルと見ている。しかし、資金面、組織面の問題は大きく、共同軍兵士による人権侵害の批判も出ている。
 3) 「Minusma」(国連マリ多元統合化安定ミッション)。2013年7月1日、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の平和維持ミッションMisma(Mission internationale de soutien au Mali)を引き継いで発足した、国連平和維持ミッション。現在13000人の兵士を擁する世界有数の規模だが、ジハディストからの攻撃に晒され、これまでに200人以上の兵士が犠牲になっている。
 4)「EUTM Mali」(La mission europpénne de formation de l'armée malienne)。2013年2月発足。EU28か国の620人の軍人から構成され、マリ軍の訓練を行う。戦闘には参加しない。EUTM Maliの任期は2018年5月から2年間延長され、予算も大幅に増額された。
 フランスやEUの考え方としては、自国の軍事介入はなるべく減らし、マリをはじめとする地域の治安部門がジハディストを取り締まる能力を備えるよう支援するということだ。しかし、残念ながら、事態は思うように進んでいない。マリ北部から始まった紛争は、今やマリ中部やブルキナファソに広がり、エスニック集団間の対立を引き起こすに至っている。状況はかなり深刻である。