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今日のアフリカ

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南スーダン暫定政府設立期限と外部の圧力

2019/11/07/Thu

南スーダンの暫定政府立ち上げ期限まで一週間を切った。11月5日、サルバ・キール南スーダン大統領は国民議会の場で、新たな暫定統一政府を期限までに設置したいとする自身の立場を強調した。

他方、キールの勢力と争ってきたSPLA/M-IO(スーダン人民解放軍/運動・野党派)は、先月、キールとともに新たな政府をつくる準備は不十分である旨を述べて、その延期を訴えた。

米国はすでに制裁を示唆して、この暫定政府の設立に向けて圧力を強めている。今後、欧米諸国や周辺国が、ラストミニッツでの駆け引きを加速させていくことは十分に考えられる展開であろう。

しかし、ここで思い起こしたいのは、2016年7月に首都ジュバで生じた軍事衝突である。2015年に、和平合意(ARCSS)に署名したキールは、署名の翌月の国民向け演説で、それが双方の「真正な合意」にあらず「押し付けられた取引」であるとして、圧力を強めて署名へと導いた他国の関与を批判した。その演説で、「平和ではなく恐怖の要素が、かなりの程度予測可能となる」とキールが述べたことは、今となれば2016年の軍事衝突を先取りする呪詛のように受け取れる(参照:松波2019)。

国際社会や周辺国がたくみに飴と鞭を使えば、期限までに南スーダンの暫定政府はかたちになるのかもしれない。しかし、新たな政府を運営することになる紛争当事者の納得が不十分なまま、外部からの圧力で形式的にそれが達成されるだけでは、2016年の悪夢が再来するだけではなかろうか。その教訓を生かす時節にあるように思う。