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今日のアフリカ

今日のアフリカ

南アフリカの多様な現実

2019/11/03/Sun

2日、横浜で開催されたラグビー・ワールドカップの決勝戦で、南アフリカのナショナルチーム・スプリングボックスがイングランドを下し、世界チャンピオンの座を掴んだ。インタビューを受けた南アの選手や監督が一様に、南アには様々な問題があるが、だからこそ国民のために勝ちたかったといった趣旨のコメントをしていたことが印象的だった。
 そうしたコメントを裏書きするように、最近の南アは経済的苦境に喘いでいる。9月に大都市で勃発した移民排斥運動(ゼノフォビア)もその表れだが、特に注目されているのが国営電力会社Eskomの経営危機である。南アの電力の9割以上を提供するこの国営企業は巨額の債務返済に苦しみ、政府から何度も緊急融資を受けている。Eskomの経営危機の背景として、ANC内の路線対立が指摘され、事態は政治問題化している
 1日、米国の信用格付け会社Moody'sは、南アの投資格付けをBaa3に据え置くと発表した。Baa3は中級格付けの最下位に位置し、これより下は「投機的」と評価される。一方、格付けの見通しとしては、StableからNegativeに変更。ラマポサ政権が経済成長率の引き上げや債務増加への対応を誤れば、債券はジャンクと見なされるようになろうと警告した。南ア債権が投機的と見なされるようになれば、市場からの資金調達は困難になり、Eskomをはじめとする経済再建も見通しが厳しくなる。今回のMoody'sの発表は、南ア経済の現状がなお厳しいことを示している。
 ワールドカップの優勝で世界に感動を与えるのも、経済危機やゼノフォビアに苦しむのも、南アの現実の姿である。実にアフリカらしいと思う。