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今日のアフリカ

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チュニジアの大統領選挙

2019/09/21/Sat

チュニジアで9月15日に大統領選挙第1回投票が行われた。7月25日にカイド・エセブシ前大統領が死去したことに伴うものだが、投票の結果、2人の新顔が第2回投票に進出することになった。保守系法律家で元大学教授のサイエド(Kaïs Saïed、18.40%)とTV局を牛耳る実業家のカルイ(Nabil Karoui、15.58%)の二人である。
 ルモンド紙は、この選挙が公明正大なものだったと評価している(9月18日付)。財政的な手段も政党のバックアップもなく、メディアも避けていたサイエドがトップを取ったことはその象徴である。一方、大統領選挙の結果は、チュニジアの状況が近年の欧米民主主義国が直面しているものと同じであることを示している。すなわち、既成政党をはじめとする既存の権威の失墜である。保守系イスラム主義のAbdelatif Mourou (12.88%)、国防相Abdelkrim Zbidi (10.73%)、首相のYoussef Chahed (7.38%)など、既成政党をバックにしたり、既に権威ある立場の候補者は軒並み落選した。2011年以来チュニジアの政権は、選挙民の失望を買い続けてきた。サイエドとカルイの二人は、「消去法」による選択であった。
 19日、穏健派イスラム主義政党ナフダは、第2回大統領選挙投票でのサイエド氏の支持を決めた。カルイ氏の方は、8月23日に不正資金疑惑のため逮捕・収監されている。カルイ氏はTVチャンネルを所有する実業家で、自分の慈善事業を自らが所有するTVチャンネルで宣伝することで人気を高めてきた。10月の決選投票までに事態がどう動くかは、まだ予断を許さない。
 2011年の「アラブの春」の口火を切ったチュニジアは、他のアラブ諸国が強圧的政権への揺れ戻しや内戦の混乱に陥る中、曲りなりにも民主主義体制を維持している。チュニジアの現実は民主主義体制の難しさも示しているが、難局を乗り切る人々の英知を信じたい。