• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

今日のアフリカ

今日のアフリカ

エボラ感染拡大が続くコンゴ東部

2019/08/03/Sat

コンゴ民主共和国東部でエボラウィルスによる感染症が確認されてから、1年が経過した。これまで感染は収束せず、7月17日にはWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」だと発表するに至った。コンゴでエボラが流行するのは、1976年にこの国でエボラウイルスが発見されて以来10回目だが、感染者約2700人、死者1800人に至った今回は、突出して大規模の被害を生んでいる。今回感染拡大が止まらない原因として、ローカルなレベルでの対応が遅れたことが指摘されている。コンゴ東部では紛争が継続しており、地域の隅々にまで医療チームが訪れることが難しい。加えて、エボラが「政治化」されたことが甚大な悪影響を与えた。今回の流行の発生源であるベニ、ブテンボ周辺は前大統領カビラに対する反感が強い地域だが、そこでの大統領選挙(2018年12月)がエボラの流行を理由として中止されたために、人々が政府のみならず医療チームにも疑いの目を向けるようになった。エボラは政府の謀略であり、デマに過ぎないと信じている住民も少なくないという。エボラ感染者を収容する施設が武装集団に襲撃され、4月にはWHOから派遣されたカメルーン人の医師が殺害される事件が起こった。これまでの支援も、ローカルレベルの保健センターよりも、都市部の病院に集中しがちだったと指摘されている(8月1日付ルモンド紙)。
 チセケディ大統領はエボラ対策を刷新するため、国家のエボラ対策調整機関であるRiposteの指導をムイェンベ・タンフム(Jean-Jacques Muyembe Tamfum)教授に任せた。同教授は1976年にエボラウィルスを発見したグループの一人である。これに対して、7月23日、オリィ・イルンガ(Oly Ilunga)保健相が辞表を提出した。彼は、エボラ対策は単一の指揮系統で行われるべきだと述べつつ、7月に入ってからJohnson & Johnson社製造の新ワクチンを採用せよとの圧力が強まったと証言した。前保健相自身は、現在使用されているMerck社製ワクチンで十分対応可能であると考え、またそのワクチンへの信頼度が下がることを懸念して、新ワクチン導入に慎重だった(7月26日付、8月1日付ルモンド紙)。
 混乱が続いているように見えるコンゴだが、チセケディ体制は徐々に固まりつつあるようだ。前大統領カビラが主導するFCC(Front commun pour le Congo)とチセケディ率いるCach (Cap pour le changement)が組閣の合意に達し、全体で65の閣僚ポスト(大臣48、副大臣17)のうち、FCCが国防相、法相、鉱山相、財務相など含む42ポストを獲得。Cashが外相、内相、予算相、経済相などを含む23ポストを獲得する見込みだと報道された(7月30日ラジオ・フランス・インターナショナル)。大統領選出から半年にして、ようやく組閣が見えてきたというところである。
 現在のところ、エボラの収束が見える状況ではまだない。それでも、近隣のウガンダやルワンダが国境閉鎖などの措置をとらず、比較的冷静に対応していることは評価できる。