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コンゴ東部でエボラ感染拡大

2019/04/01/Mon

 コンゴ民主共和国東部ベニ、ブテンボ付近ででエボラウイルスの感染者が確認されたのは、昨年8月のことだった。コンゴでエボラ出血熱が発生したのは今回が10回目だが、これまで感染は早期に終結してきた。しかし今回、感染は一向に収束せず、3月26日までに感染者は1000人を超え、639人が死亡した(3月29日付ファイナンシャルタイムズ)。感染が収束しない原因として大きいのは、武力紛争継続地域でエボラが広がっていることである。
 今回のエボラウイルス感染地域であるベニ、ブテンボ近郊は、20年以上にわたって断続的に武力紛争が継続してきた。近年では、大規模な武力衝突こそ起きていないが、住民が何者かに虐殺される事件が頻繁に発生し、治安が不安定なことに変わりはない。この虐殺事件は、ウガンダの反政府武装勢力ADFによると見られるものの、犯人は検挙されていない。長年にわたって国連PKO部隊(MONUSCO)が駐屯しているが、住民虐殺事件に有効な対策を打てていない(詳細は、澤田昌人「コンゴ民主共和国東部における住民の殺戮----平和維持活動に対する脅威」『アフリカレポート』55: 74-78.参照)。こうした状況下でエボラが広がるのは初めてことである。
 3月15日付ルモンド紙は、「エボラの政治化」という表現を用いて、問題の難しさを指摘している。昨年12月30日に実施された大統領選挙で、ベニ、ブテンボ地域は投票の4日前になって選挙が中止された。エボラ感染による混乱が理由である。ベニ、ブテンボ地域は、有力な政治家ンブサ・ニャムウィシの地盤で、反政府感情が強い。人々は、大統領選挙が中止されたのは、エボラが理由ではなく、ニャムウィシ支持者の投票を妨害するためだと解釈した。エボラウイルスへの不信は、それにより流入するカネへの不信につながる。大きな車を乗り回す保健省の役人や医療専門家に対して、人々はエボラがビジネスになっていると感じ、反発を強めているという。
 こうした状況の背景には、政権から長年にわたって放置されてきたという人々の感情がある。2月末には、ブテンボのエボラ治療施設が何者かに攻撃される事件が起こったが、これも住民の中に政府への不信感があるためと考えられる。エボラ出血熱に対してはワクチンの試行も始まっており、適切な対策を講じれば抑制は可能である。実際コンゴでも、これまではそれに成功してきた。しかし、国家に対する不信が住民に広まっているとき、それが医療従事者への不信に転化し、感染症対策に大きな障害となることを、この例は示している。