• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

今日のアフリカ

今日のアフリカ

アラビア半島とアフリカの角

2018/10/30/Tue

10月29日付ファイナンシャルタイムズ(FT)紙は、ソマリランドのベルベラ港が活況を呈している様子を報じている。ベルベラ港は、ドバイに本拠地を置くDP World社が運営を担っており、4億4200万ドルに上る港湾拡大プロジェクトに投資している。この投資は、同港の荷揚げ量を5倍に拡大するとのことである。
 最近、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、トルコ、カタールといったアラビア半島諸国がアフリカ大陸、特にアフリカの角地域への影響力を拡大させているという記事が目立つ。今年に入って注目を集めたエチオピアとエリトリアの接近の背景にもサウジアラビアやUAEの影響がある(6月13日、9月17日付ルモンド紙)。UAEはエチオピアに30億ドルの援助を約束する一方、エリトリアのアッサブ港に海軍基地を建設するなど、この地域への軍事的影響力も強めている。この点はサウジアラビアも同じで、サウジもUAEも、アッサブを拠点にイエメン内戦に関与しているのである。
 ベルベラ港の発展の背景にはエチオピア経済の拡大がある。同国は現在、貿易の9割をジブチに依存しているが、この依存度低下を目指し、ベルベラへの投資を行っている。一方で、DP Worldがソマリランドに接近している背景には、ジブチとの関係が冷却化したことがある。同社は2月までジブチ港でDoralehコンテナを運営していたが、ジブチが契約を一方的に変更し、中国企業に港湾運営権を与えたことで関係が悪化している。この背景として、7月25日付FTは、中国が軍事基地をジブチに設置するなど関係を深めたことを理由に挙げている。こうした動きの一方で、ソマリランドで活動するDPに対しては、ソマリア政府が批判の目を向けている。
 エチオピアとエリトリアの接近により、アフリカの角地域で緊張緩和が進んでいることは歓迎すべきである。この変化においては、エチオピアのアビィ首相の指導力に注目が集まりがちだが、アフリカの角からアラビア半島にかけての国際関係が重要な意味を持っていることに改めて注意を向けておきたい。