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今日のアフリカ

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南ア暴動をめぐるFT紙社説

2021/07/22/Thu

 ズマ前大統領の収監をきっかけとして南アで広がった暴動と略奪は、社会と国土に甚大な被害を与えた。これに関して、21日付ファイナンシャルタイムズ紙は、社説で強いメッセージを発した。その概要は次のようなものである。
 この騒乱の背景にコロナ禍や経済危機の影響があることは確かだが、重要なことは、あきらかにこれが周到に準備されていた(orchestrated)ことだ。その目的は、国家を混乱させ、ズマを釈放させて、ラマポサを辞任に追い込むことであった。こうしたシナリオを現実のものとすることは許されない。ラマポサに幾多の欠点があるにせよ、彼が法の支配と、ズマ政権の下で骨抜きになった制度の再建の側に立っていることは明らかだ。ラマポサは、ズマ政権のナンバーツーであっただけに、これまで慎重に行動してきた。しかし、前大統領派が牙を剝いてきた以上、闘わねばならない。国家制度再建のペースを上げるとともに、党内闘争を強化しなければならない。それによってANCが分裂したとしても、仕方がない。国家を収奪しようというグループをパージすることは当然だが、制度再建のために素早く動かなければ、今回の暴力は最後にならないだろう。
 南アの暴動の背景にANC内の対立があることは衆目の一致するところだ。それでも、ANCの分裂を覚悟の上で、党内闘争を強化せよというメッセージには、少々驚かされる。ほとんど檄文ともいえる社説だが、そこには西側諸国にとって極めて重要なパートナーである南アフリカに、何としても立ち直ってほしいという強い願望と期待が込められていると言えよう。