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今日のアフリカ

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南アで大規模な騒乱

2021/07/16/Fri

 15日、南アフリカ政府は、先週末からクワズールー・ナタル州とハウテン州で広がった騒乱で117名が死亡したと発表した。タウンシップなどで200以上のショッピングモールが略奪被害を受けたと報じられている(15日付ファイナンシャルタイムズ)。ラマポサ大統領は今回の騒乱について、「我々の民主主義の歴史の中で見たことがない」暴力だと形容した。状況は鎮静化されつつあるが、今回の事件は、アパルトヘイト廃止以降の南アにおいて最大規模の社会秩序崩壊だったと言えるだろう。クワズールー・ナタル州とハウテン州という最も人口が多く、経済的に重要な州での事件だけに、もともと停滞していた南ア経済がいっそうの打撃を受けることになる。
 野党の民主同盟(DA)は、ANCの内部抗争がスピルオーバーしたと批判した。この騒乱のきっかけが、ズマ元大統領の収監とそれに対する抗議だったことは疑いない。クワズールー・ナタル州最大都市の港町ダーバンでは多数の倉庫が放火されたが、警官は何もせず傍観していたと言われる。警察組織のなかには、ズマ支持派に乗っ取られたものもあるとの治安アナリストの声が紹介されている(15日付FT)。
 ただし、ANCの党派抗争から始まったとしても、度重なるロックダウンによって生活苦に陥った人々が、機会主義的に略奪に乗じたという側面は否定できない。略奪と破壊がさらなる失業を生むとしても、何も失うものはないと考える人々もまた確実に存在する。コロナ禍がアフリカ諸国の政治経済を蝕んでおり、こうした混乱に繋がっていることも確かである。