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今日のアフリカ

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DRC・ルワンダ間の緊張再燃からみえるもの

2022/06/05/Sun

 5月28日、コンゴ民主共和国(DRC)政府スポークスマンのムヤヤ(Patrick Muyaya)は、東部で活動を活発化させている反政府武装勢力M23に関して、ルワンダからの支援を受けていることは明らかだとして、ルワンダ政府を公式に非難した。そして、同国内へのルワンダ航空の乗り入れを停止するとともに、キンシャサに駐在しているルワンダ大使を呼び、抗議の意を伝えた。また、コンゴ領内で活動していたルワンダ兵2名を拘束したと発表した(29日付Radio France Internationale)。
 ルワンダ側は、ルワンダがM23を支援しているとの非難を全面的に否定し、この問題はコンゴの国内問題だと主張している。2名の兵士についても、国境付近を警備していたところを誘拐されたと述べている。ビルタ(Vincent Biruta)外相は、ルワンダ領土内に砲撃が加えられ、市民が負傷したこと、コンゴ軍がFDLRと協力して戦っていることを指摘し、「コンゴ側からの挑発が続けば、傍観できない」と述べた(31日付New Times)。FDLRとは、コンゴ東部で活動するルワンダ系武装集団で、もともとは1994年のジェノサイドに加担した勢力によって結成された組織である。
 DRCとルワンダとの関係悪化は既に伝えられているが、ルワンダ兵の拘束をきっかけに、緊張が急速に激化したわけである。両国の緊張の高まりに対して、AU議長のマッキー・サルセネガル大統領は、アンゴラのロウレンソ大統領に両国の仲介を依頼。求めに応じてロウレンソ大統領は、1日にDRCのチセケディ大統領と面会して、ルワンダ兵2名の釈放にこぎ着けた。
 AUの時宜を得た関与によって緊張がいったん沈静化ことは喜ばしいが、状況に本質的な変化はない。M23は自分たちをコンゴ国軍に統合するよう要求し、これが満たされないとして蜂起を繰り返している。コンゴ内戦の処理の過程で多くの武装集団が国軍に統合され、M23もこれを望んでいるのだが、DDRの名の下で行われた軍の統合に対しては、今日否定的な評価がなされている。統合は武装勢力が犯した罪を問わずに「アメ」を与えることを意味するし、統合しても長続きしないことが多い。
 M23のスポークスマンは、「自分たちは外国人と見なされ、統合を拒絶された」と述べている。彼らの中心はコンゴに居住するルワンダ系住民で、その出自は様々であるものの、19世紀からコンゴに居住してきた系譜を持つ人々もいる。植民地化以降、ルワンダ系住民は植民地当局から「外国人」と見なされ、市民権を与えられなかった。それがコンゴ東部紛争の基層のひとつをなしている。この問題を処理しない限り、同様の事態が繰り返されるだろう。