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今日のアフリカ

今日のアフリカ

マッキー・サルAU議長(セネガル大統領)のインタビュー

2022/06/11/Sat

 アフリカ連合(AU)議長国であるセネガルのマッキー・サル大統領は、3日、AU委員会委員長のムーサ・ファキ・マハマト(元チャド外相)とともに、黒海沿岸のソチでロシアのプーチン大統領と会談した。会談では、ウクライナ戦争のために黒海経由でロシア産、ウクライナ産の食糧や肥料が流通せず、アフリカ経済が危機的な状況に直面していることが説明された。プーチンは、「ウクライナ側がオデーサ港の機雷を除去すれば、穀物等の輸出は問題ない」と述べ、会談後サルは「安心した」と述べた。
 10日付けルモンド紙には、サル大統領との単独インタビューが掲載されている。プーチンとの会談の趣旨などについて抜粋して紹介する。


 プーチンとの会談後に「安心した」と述べたが、その意図は何か?
 「アフリカの立場をじっくり説明できたことは良かった。」
 問題は西側の対ロ制裁なのか、それともロシアのウクライナ侵攻なのか?
 「アフリカ諸国は、二つの問題から重大な影響を受けている。ウクライナ戦争そのもののの帰結、そして対ロ制裁である。後者については、特にロシアがSwiftから排除されたことで、アフリカ諸国はロシア産品へのアクセスが非常に困難になった。これが食糧や肥料価格の高騰につながり、深刻な影響を生んでいる。」
 ウクライナのゼレンスキー大統領とビデオ会談するとのことだが?AUとして何らかの解決策を提示するのか?
 「AUは紛争当事者ではなく、戦争を止めてくれと言っている。まずは戦争を止めて、話し合ってくれということだ。我々は、誰が間違っているとか、誰が正しいとかいう議論をしてはいない。穀物と肥料へのアクセスがほしいだけだ。我々は戦争と制裁の間に挟まれている。」
 国連での対ロ非難決議で、セネガルは棄権票を投じた。投票前に圧力があったと述べているが?
 「投票前にEUやUSなどパートナー諸国から、投票行動に関する要請があった。他の多くの国も投票について同様の『友好的な圧力』を受けたと聞いている。結果として、アフリカ諸国の投票行動は多様であり、同一のポジションではない。決議に賛成しなかったからといって、戦争を始めた国に反対していないとか、親ロシアだということではない。...コロナ危機以来、アフリカがきわめて深刻な問題に直面していることを世界に理解してほしい。我々はEUなどに働きかけ、アフリカに資金を回すよう国際社会に訴えている。しかし、例えばIMFの特別引き出し権の配分に際して、アフリカに回されたのは全体のわずか5%だった。こうしたなかで、ウクライナ戦争が起こったのだ。」
 非難決議に棄権を投じたことがフランスとの軋轢を招かないか?
 「この紛争や投票行動が、フランス、ヨーロッパ、アメリカとの関係を悪くすることになってはいけない。しかし、『北』の国々にはアフリカの投票行動の動機を理解してほしい。我々は我々の利益を守る。他の国々と同じように。」

 2010年代半ば以降、アフリカ諸国の経済は総じて悪化に転じ、Covid-19がそれに拍車をかけた。その文脈でウクライナ戦争が起こったため、アフリカ諸国は自国の安定を優先せざるを得ない。したがって、ロシアとの関係を断ち切ることはできない、という説明である。非同盟諸国運動のイデオロギーを持ち出す南アフリカの説明とは対照的だが、アフリカ諸国の投票行動の背景には複数の要因が関連していると理解すべきなのだろう。