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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2022年03月

国連ヘリの墜落とコンゴ・ルワンダ間の緊張

2022/03/31/Thu

 29日、コンゴ民主共和国東部に展開する国連平和維持部隊(MUNOSCO)のヘリコプターが墜落。パキスタン兵6名、ロシア兵、セルビア兵各1名が死亡した。同機は、ルワンダ国境に近いルツル郡を飛行中で、この地域ではコンゴ政府軍と反政府武装勢力「M23」とが軍事衝突状態にあった。コンゴの北キヴ州当局は、国連ヘリがM23によって撃墜されたと発表し、M23側は逆に、コンゴ軍側にヘリ墜落の責任があると主張している。  M23は「コンゴ革命軍」(Armée révolutionnaire congolaise)とも呼ばれ、コンゴ東部のルワンダ系住民を母体とする組織である。2012年11月には、東部の主要都市ゴマを軍事制圧したこともある。この事件は、国連PKOが強力な攻撃能力を有する「介入旅団」(FIB)を保持するきっかけとなった。FIBの攻撃を受けて、M23は2013年にルワンダ、ウガンダ領内に撤退していた。しばらくなりを潜めていたが、昨年11月頃から再びコンゴ東部での活動が報告されるようになっていた(30日付ルモンド)  M23とコンゴ国軍の衝突のなかで、28日にはコンゴ政府当局者が、M23を支援しているとしてルワンダを公に非難する事態になった。北キヴ州政府スポークスマンのエケンゲ(Sylvain Ekenge)大将は、2名のルワンダ兵を捕虜にしたとしてTVで公開。コンゴ政府スポークスマンは、ルワンダ大使を外務省に呼んで説明を求めた。  ルワンダ側は、当然関与を否定している。ルツル郡に接するルワンダ西部州の知事は、TVで公開された2名はルワンダ兵ではなく、1ヶ月以上も前に捕虜になっていた人物だと述べて、コンゴ側の主張には根拠がないと反論した。また、M23のスポークスマン(Willy Ngoma)も、自分たちはどこからも支援を受けていないと主張している。  コンゴとルワンダは、昨年6月にチセケディとカガメが国境を越えて互いに訪問し、ゴマとギセニィで会談するなど、関係改善を内外にアピールしていた。今回の事件と緊張の再発が示すように、コンゴ内戦の原因になったルワンダ系住民をめぐる問題は依然として解決していない。首脳レベルで蜜月をアピールしても、ローカルな衝突が一気に緊張を高める構造が存在するのである。

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エチオピアで停戦の動き

2022/03/27/Sun

 2020年11月以来内戦が続くエチオピアで、停戦が現実味を帯びてきた。24日政府は、北部ティグライ州への食料援助を促し、同州が置かれている封鎖状態を解除するために、「一方的停戦」を実施すると宣言した。これを受けて25日、反乱軍側も停戦を尊重すると発表した。  国連やAU、米国やEUなどは、この間一貫して紛争当事者に停戦と交渉を促していた。AUは特使として派遣されたオバサンジョ前ナイジェリア大統領が調停に当たっていたし、米国も先週サターフィールド(David Satterfield)「アフリカの角」特使がエチオピア入りしていた(25日付ファイナンシャルタイムズ)。  WFPによれば、エチオピア北部では900万人が食料援助を必要としており、特にティグライ州では460万人(人口600万人の83%)が食料安全保障が脅かされた状態にある(25日付ルモンド)。実効的な停戦が強く望まれる。  エチオピア政府は、昨年6月28日にも一方的停戦を宣言したことがある。この際には「耕作期の終わりまで」を停戦期限とし、その後戦闘が再開された。昨年11月にはTPLFがアムハラ州、アファル州で攻勢を強め、首都200kmの地点に迫ったが、12月にはティグライ州に撤退した。年明け以降、アビィ政権はTPLF要人を含む反政府勢力の政治犯を釈放するなど、歩み寄りの姿勢を見せていた(1月10日付ルモンド)。ただし、その後も政府側がドローンでティグライ州を空爆するなど、すんなりと停戦に向けて進んできたわけではない。今回の両者の動きが、実効的な停戦へと進展することを望みたい。

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スペインが西サハラ政策を転換

2022/03/22/Tue

 18日、スペインのサンチェス首相はモロッコのモハメド VI世に書簡を送り、西サハラ問題に関するモロッコの「自治化計画」を支持すると表明した。これはモロッコが2007年に国連に提出したもので、西サハラに対するモロッコの主権を認めたうえで自治を与える内容である。モロッコが西サハラにおける治安維持、外交、通貨などの主権国家に関わる問題を担当し、教育、インフラ、開発などを地元が担うというもの。スペインとしては、これまでの中立的な姿勢からの大きな変化である。  サンチェス政権は中道左派の社会労働党と急進左派のポデモス党との連立政権だが、この決定はポデモス党との協議がないまま下された。同党のディアス第二副首相は「サハラウイの人々の民主的意思の尊重が必要」だとツイッターでコメントした。右派の人民党は「軽率な方針転換」だと批判している(20日付ルモンド)。  当然ながら、この動きにポリサリオ戦線、アルジェリアは強く反発している。アルジェリアからは、天然ガス供給を制限するなどの報復も予想される。一方、今回のスペインの決定がロシアのウクライナ侵攻とヨーロッパのエネルギー危機のなかで下されたことから、アルジェリアの反発は織り込み済みとの見方も強い。スペインにとってモロッコはアフリカ最大の貿易相手国であり、移民対策においても不可欠のパートナーである(21日付ルモンド)。  トランプ政権期にモロッコ寄りの立場を表明した米国に続いて、ヨーロッパ諸国も同様の立場に移行しつつあるように見える。今後国連が、どのようにこの問題を扱っていくのか注目される。

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ロシアのウクライナ侵攻とアフリカ

2022/03/06/Sun

 2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は、アフリカにも甚大な影響を与えている。ウクライナには8万人のアフリカ人(ほとんどは留学生)がいたと推計されるが、彼らの退避と帰国が緊急の課題となった。国境で差別的な扱いを受けたとの報道もある。  中期的に懸念されるのは、食料、エネルギー価格の高騰である。特に北アフリカ諸国にはロシア、ウクライナからの小麦輸入に依存している国が多く、価格高騰が脆弱な経済に打撃を与える恐れが強い。現在急騰している石油価格の影響も同様に懸念される。  一方、3月2日の国連総会におけるロシア非難決議の際に明らかになったのは、アフリカの多くの国が賛成票を投じなかったことである。エリトリアが反対、アンゴラや南アフリカなど17カ国が棄権、ブルキナファソやモロッコなど8カ国が投票しなかった。54の加盟国のうち、26が賛成しなかったわけである。この理由は各国それぞれである。中央アフリカのように、ロシアの民間軍事企業ワグネルから傭兵を受入れ、首都バンギでロシアの行動を支持するデモが起こっている国もある(3月5日付Radio France Internationale)。南アフリカはBRICsの枠組みでロシアと従来から関係が深く、またラマポサ政権の「親西側」のスタンスを批判する勢力に配慮したと言われる(3月4日付Africa Confidential)。  ロシア侵攻が開始された2月24日、AUはロシアに国際法を守るよう声明を出した。しかし、AU議長国のセネガルは、国連総会決議では棄権した。ルモンド紙は、外交筋の情報などから、1)ロシアからサイバー攻撃などを仕掛けられる恐れ、2)西側に追従する姿勢を批判する国内野党勢力への配慮、という2点を挙げている(3月4日付)。こうした状況は、多くの国に一定程度共通する。マリで典型的に見られた反仏感情は、西アフリカ諸国に広まっているということである。  ウガンダは「非同盟諸国運動」の次期議長国であることを理由に棄権したが、国内では、ムセヴェニ大統領の息子のカイネルガバ(Muhoozi Kainerugaba)将軍が「プーチンは完全に正しい」、「人類の大半はウクライナに対するロシアの姿勢を支持している」とツイートしたと報じられている(4日付ルモンド)。  この状況をどう解釈するかは慎重に分析すべき問題である。ロシアはアフリカに対して突出した武器輸出国であり、またRT(Russian Today)などメディアもかなりの国に浸透している(4日付AC)。また、アフリカでは、植民地支配などの経験から、西側の偽善に対する感覚も敏感である。いずれにせよ、今回の国連決議に対するアフリカ諸国の対応は、現時点での彼らの「感覚」を示したものであり、今後それがどう変化するのか、しないのかが注目される。

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