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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2020年06月

コンゴ:官房長官に汚職容疑で懲役20年の判決

2020/06/21/Sun

20日、キンシャサ高等裁判所は、チセケディ大統領就任後の「100日緊急プログラム」での汚職容疑で、官房長官のカメレ(Vital Kamerhe)に20年の強制労働、10年間の被選挙資格停止の判決を下した。4月8日に逮捕されたカメレの裁判は、5月11日以降TV中継された。  「100日緊急プログラム」は、2019年1月に大統領に就任したチセケディが打ち出した緊急インフラ整備計画だが、杜撰な資金利用が問題になっていた。6月20日付ルモンド紙によれば、カメレ側の弁護団は、カメレがこのプログラム執行に直接関与していないと主張したが、検察側はカメレがプログラムの実質的な組織者であり、市場価格に見合わない4500軒の住宅建設に5900万ドルを引き出したと主張した。  カメレはこの資金引き出しに執着し、その金はレバノン人実業家のジャマル(Samih Jammal)が所有する企業に流れたが、発注から1年たっても、4500軒のうち211軒しか完成しなかったという。カメレとその家族に対して、ジャマルから高額の不動産が提供されたとの指摘もある。20日の判決では、ジャマルに対しても、カメレと同じ20年の強制労働の判決が下された。判決に対して、カメレらは既に控訴の意向を明らかにしている。  この判決がコンゴの政局に大きな影響を与えることは必至である。カメレは、自らの政党UNC(Union pour la nation congolaise)を率い、先の大統領選挙では当初自らも立候補していたが、それを取り下げてチセケディ支持に回った経緯がある。UNCは現在、チセケディの政党UDPS(Union pour la démocratie et le progrès social)とともに与党連合CACH(Cap pour le changement)を構成している。UNCが、カメレをあくまで支持する者と、チセケディ支持に流れる者とで分裂する可能性がある。  判決自体が権力闘争の一環であり、政権の陰謀だとの説も強い。常に汚職で批判されてきたカビラ陣営から全く訴追される者がでていないのに、チセケディ陣営からカメレが訴追されたのは、チセケディが汚職撲滅に積極的な姿勢を見せることで国内的、国際的な支持を得ようとしたからだと、南アフリカの研究者(Stephanie Wolters)は指摘する(21日付ファイナンシャルタイムズ)。チセケディにとって、カビラ陣営の政治家を標的にするより、カメレを訴追する方が簡単だし、「100日緊急プログラム」失敗の責任を誰かに追わせる必要がある、というわけだ。  真相はなお不明だが、今回の事件によっても、チセケディ政権の国内権力基盤の弱さが改めて浮き彫りになった。今後チセケディ政権は、カビラ陣営への依存を強める可能性が高い。

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ICCがダルフール紛争の戦争犯罪容疑者を初めて拘束

2020/06/14/Sun

6月9日、国際刑事裁判所(International Criminal Court: ICC)はプレスリリースをとおして、ダルフール紛争の戦争犯罪容疑者、アリ・クシャイブ(本名アリ・ムハンマド・アリ・アブドゥ=アル=ラフマン)が、中央アフリカで自ら投降し、その身柄がICCに引き渡されたと発表した。これは、ダルフール紛争の戦争犯罪容疑者のなかで初めてICCに身柄を拘束された例となる。 アリ・クシャイブは、推定1957年生まれ。スーダンの西ダルフール地方におけるローカル社会の実力者であり、スーダン政府が組織した民兵組織、「大衆防衛軍(Popular Defence Forces: PDF)」に参加した。 彼は、2003年8月から2004年3月にかけて、口語アラビア語で「馬に乗る武装した男」を意味する部族民兵、「ジャンジャウィード(Janjaweed)」を率いて、スーダン政府が主導する反乱勢力鎮圧作戦に参加した。この軍事作戦は、スーダン政府軍(Sudanese Armed Forces: SAF)と、ジャンジャウィードと連携する大衆防衛軍が、ダルフールの反政府武装組織である「スーダン解放運動/軍(Sudanese Liberation Movement/Army:SLM/A)」と「正義と平等運動(Justice and Equality Movement: JEM)」に対して行ったものであり、一般にダルフール紛争と呼ばれている。ダルフール紛争は、30万人以上の犠牲者と数百万人の国内避難民を生み出し、「世界最悪の人道危機」と呼ばれている。 彼は、ジャンジャウィードのリーダーとスーダン政府との仲介役となり、兵士のリクルート、兵器、資金、食糧の提供を行っただけでなく、自ら民兵を率いて、市民の殺害、拷問、強姦、その他の犯罪行為を行ったと考えられている。ICCは、2007年4月27日、アリ・クシャイブともう一人の容疑者に逮捕状を発出した。アリ・クシャイブについては、2003-04年に行った22件の人道に対する罪と、28件の戦争犯罪について責任が問われている。しかし、スーダンのバシール政権は、これまでICCの捜査への協力を拒否し、容疑者たちの身柄引き渡しに応じてこなかった。 6月10日付のSudan Tribuneによれば、スーダン政府は、ICCによるクシャイブ拘束の発表に対し、オマル・アル=バシール前スーダン大統領を含む4人の戦争犯罪容疑者についてもICCと対話の準備があるという声明を出した。スーダン政府は、すでに最高評議会の高官が2020年2月に出した報道発表のなかで、4人の戦争犯罪容疑者のICCへの身柄引き渡しに同意すると公表している。この身柄引き渡しは、スーダン政府とダルフールの反政府武装組織との間で行われた和平合意案のなかに含まれている。 今回のアリ・クシャイブの拘束によって、ダルフール紛争における戦争責任問題のさらなる進展が期待される。

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ブルンジ大統領死去

2020/06/10/Wed

ブルンジ政府は、9日、ンクルンジザ大統領が8日に死去した発表した。ンクルンジザは、6日(土)にバレーボールの試合を観戦している途中で気分が悪くなり、カルジ(Karuzi)州の病院に入院。日曜にはやや回復したものの、月曜午前中に突然体調が悪化し、心臓停止に陥ってそのまま死亡した。55歳であった。  政府は「心臓停止」とのみ発表しており、死因は不明である。5月31日に妻がCovid-19の疑いでナイロビの病院に緊急搬送されており、同じ感染症だったのではとの見方があるが、確認されていない。  ンクルンジザは、1964年生まれ。当時の政権が主導したフトゥの大量虐殺によって、8歳の時に父を失った。BBCによれば、父は当時国会議員であった。また母はトゥチで、現在もンゴジ(Ngozi)で健在だという。ブルンジ大学で体育教師をしていたが、内戦の中で、1995年に反政府組織CNDDに参加し、武装組織FDDを率いた。2001年にCNDD-FDD代表に選ばれ、2005年には選挙で大統領に選出された。  2015年、憲法違反の疑いが強いンクルンジザの大統領選出馬によって内政は混乱し(武内「アフリカの三選問題」)、主要ドナーとの関係も著しく悪化した。この際の混乱により、ブルンジは1200人の死者と40万人の避難民を出した(6月9日付ルモンド)。  5月20日に実施された大統領選挙には出馬せず、腹心のンダイシミエ(Evariste Ndayishimiye)を与党CNDD-FDDの候補者として当選させた。ただし、3月には「愛国主義の最高指導者」の称号を得て、多額の年金などを保障されていた。  ンクルンジザの死を受けて、政府は7日間の服喪を発表した。8月20日の就任式まで任期が残っているが、その間の大統領代行は国会議長のニャベンダ(Pascal Nyabenda)が務める。  大統領選挙が終了したばかりで、彼の死が直接ブルンジの政治を混乱させることはないだろう。むしろ、ブルンジ研究者のチボン(Christian Thibon)が言うように、彼の死が事態打開のきっかけになるかもしれない。ンダイシミエはCNDD-FDDの軍部出身だが、2015年以降世界から孤立した状態にあるブルンジに変化をもたらす可能性はある。

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リビア内戦の局面転換と地中海の資源問題

2020/06/08/Mon

 6日、エジプトのシーシー大統領は、リビアの反政府勢力(LNA)を率いるハフタル将軍と会談し、「カイロイニシャティブ」として停戦を提案した。一方、同日、トリポリの暫定政府軍(GNA)は、地中海沿岸の重要都市シルトを攻略する作戦を開始した。  リビアの状況は最近になって急展開し、トルコの支援を得たGNAが攻勢を強めている。ハフタルは2016年に東部石油産出地帯からイスラーム急進主義勢力を駆逐して注目を集め、エジプト、UAE、サウジアラビア、またロシアの支援も得ていた。欧米諸国も、イスラーム急進主義勢力抑止の立場から、事実上ハフタルを支援してきた。ハフタルは、2019年4月には首都の武力制圧を目指して内戦の火ぶたを切って落とし、当初はLNAの進軍が目立った。  しかし、2019年末にGNAがトルコと軍事協定を結び、トルコが内戦に参戦すると、事態は大きく変化した。トルコは新型無人機や親トルコのシリア人傭兵を投入するなどして戦況を逆転させ、リビア西部からLNAを駆逐した。LNAを支援してきたロシア人傭兵もリビアを去ったと報じられている。今回、ハフタル将軍が和平に前向きなのは、自身の劣勢を認識しているからである。  6月5日付ルモンド紙は、GNAとトルコが関係を深めたことで、地中海の資源開発をめぐる紛争が顕在化すると報じている。トルコは、GNAとの関係強化を梃子にして、地中海東部のガス田開発を進めようとしているからである。このガス田は関係各国の権利が未確定な地域に位置しており、トルコの開発案にはギリシャ、キプロス、エジプト、UAE、そしてフランスが非難をしている。EUはこの計画を違法だと非難し、制裁をかけるとトルコを脅しているが、トルコは反発している。  リビア内戦は、主要アクターであるGNAとLNAに、それぞれトルコとロシアが深く肩入れすることにより、代理戦争の様相を呈している。トルコ、ロシア両国とも、リビア内戦を利用して、北アフリカ・地中海地域における自国の権益を確保しようとしている。リビア内戦の平和的解決までには、まだまだ時間がかかりそうだ。

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ケニア農業・食料部門への打撃

2020/06/05/Fri

6月4日付ファイナンシャルタイムズは、Covid-19によるケニア経済、特に農業・食料部門への打撃について報じている。ケニアでは、花卉、野菜、果物などヨーロッパ諸国向け園芸産業が近年急速に成長したが、3月以降、国際線の停止に伴って、輸出がほぼ停止している。これにより、毎日350万ドルの損失が生じていると推計されている。  加えて、物流の混乱が食料供給に大きな打撃を与えている。タンザニアからのトラック流通が一例である。ナイロビ市場に対しては隣国タンザニアから多くの生鮮食料品が輸出されているが、Covid-19の拡大によって、ケニア保健省の指示に従い、国境でトラックドライバーが新型コロナウイルス感染症の検査を受けることになった。国境で採取された検体の検査結果がナイロビから戻ってくるまで5日程度必要で、トラックはその間、炎天下での待機を余儀なくされる。生鮮食料品はこの間に確実に傷んでしまう。以前は毎日250台のトラックがケニア・タンザニア国境を通過していたが、現在では50台程度しか通れないという。ナイロビでは、生鮮食料品不足のため、価格が高騰している。  ケニアはサバクトビバッタの被害にも直面しており、農家は二重三重の打撃を受けている。農業部門のダメージは、食料価格へと跳ね返り、都市住民の生活を直撃する。心配なニュースである。

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