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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2019年11月

南ア航空、破たんの危機

2019/11/28/Thu

28日付ファイナンシャルタイムズ紙は、南ア航空(SAA)が破綻の瀬戸際にあると報じた。27日、プラヴィン・ゴーダン公企業担当相は、同社が従業員に11月分の給与を半額しか支払えなかったと発表した。SAAは南アのフラッグ・キャリアだが、ズマ時代の放漫経営によって赤字が続き、経営危機に陥っている。その対応については政府内でも意見が分かれており、ゴーダンはSAAの再生に前向きだが、ティト・ンボウェニ財務相は更なる資金注入に消極的で、整理したい意向と伝えられている。ここ数日のうちに20億ラントの資本を確保できなければ破綻が現実味を帯びてくると言われ、ラマポサ大統領の意思決定が待たれている。  政府が新たな負担を被ることになれば、市場から厳しい反応を受けることが予想される。市場の南アに対する評価は既に厳しく、格付け会社のなかで南ア債をジャンクでないと見なしているのは今やMoody'sだけである。この評価が下がれば、南アの経済再建はさらに厳しさを増す。  SAAの処理は難題だが、これはまだ第一幕だ。より難しいのは、国営電力会社Eskomの処理で、こちらは倒産という選択肢がない。ズマ時代のレガシーともいえるが、ラマポサ政権は当面苦しい対応を迫られそうだ。

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マリに対する国際社会の関与

2019/11/27/Wed

11月25日、マリ国内、ブルキナファソ、ニジェール国境付近のLiptako地域で作戦中の仏軍ヘリ2機が衝突して墜落。仏軍兵士13名が死亡した。これにより、2013年1月にオランド前大統領がマリへの軍事介入を決断して以来、仏軍兵士の犠牲者は41名となった。この地域では、11月1日にマリ軍基地が攻撃され兵士49人が死亡、また翌2日には仕掛け爆弾によって仏軍兵士1名が死亡している。これらの攻撃はいずれも「大サハライスラム国」(GSIS)が犯行声明を出している。マクロン大統領は、サヘル地域がイスラム急進勢力(ジハディスト)の手に落ちればヨーロッパへの移民・難民がその思想に染まる恐れがあるとして、その掃討作戦に高いプライオリティを置いている。  フランスは様々な理由から、この地域の治安政策において多国間主義を重視してきた。結果として今日、様々な組織がサヘル地域の安全保障に関わり、複雑な様相を呈している。26日付ルモンド紙を参考に整理する。  1)フランスによる軍事介入。2013年1月11日に開始された「セルヴァル」"Serval"(ヤマネコ)作戦。2014年8月1日に同作戦を引き継いだ「バルカンヌ」"Barkhane"作戦がこれにあたる("Barkhane"は「三日月型砂丘」の意味)。兵士1700人の規模で、マリ北部を占拠したジハディスト勢力の拡張、南進を抑えることを目的にしていたセルヴァル作戦に比べると、バルカンヌ作戦は対象地域をマリ、モーリタニア、ニジェール、ブルキナファソ、チャドに拡大し、現在部隊規模は4500人と、フランス最大の国外軍事作戦になっている。犠牲者も多く、2013年以来41名の兵士が死亡した。  2)「 G5サヘル」。2015年11月、モーリタニア、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、チャドの首脳がサミットで、ジハディストと戦うための共同軍設立を決定。フランスがこれを支援して具体化した。フランスは、「G5サヘル」をアフリカによる治安問題解決のモデルと見ている。しかし、資金面、組織面の問題は大きく、共同軍兵士による人権侵害の批判も出ている。  3) 「Minusma」(国連マリ多元統合化安定ミッション)。2013年7月1日、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の平和維持ミッションMisma(Mission internationale de soutien au Mali)を引き継いで発足した、国連平和維持ミッション。現在13000人の兵士を擁する世界有数の規模だが、ジハディストからの攻撃に晒され、これまでに200人以上の兵士が犠牲になっている。  4)「EUTM Mali」(La mission europpénne de formation de l'armée malienne)。2013年2月発足。EU28か国の620人の軍人から構成され、マリ軍の訓練を行う。戦闘には参加しない。EUTM Maliの任期は2018年5月から2年間延長され、予算も大幅に増額された。  フランスやEUの考え方としては、自国の軍事介入はなるべく減らし、マリをはじめとする地域の治安部門がジハディストを取り締まる能力を備えるよう支援するということだ。しかし、残念ながら、事態は思うように進んでいない。マリ北部から始まった紛争は、今やマリ中部やブルキナファソに広がり、エスニック集団間の対立を引き起こすに至っている。状況はかなり深刻である。

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エチオピア与党連合の合併、新党結成の動き

2019/11/26/Tue

現在のエチオピアの政権については、民族帰属に基づく4つの政党が連立与党を形成している。今般、それらの政党が1つに合併する動きがあることがわかった。 連立与党であるエチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)は、オロモ人民民主機構(OPDP)、アムハラ民族民主運動(ANDM)、南エチオピア人民民主戦線(SEPDF)、そしてディグレ人民解放戦線(TPLF)の4つの党から構成されている。 EPRDF内でこの合併・新党結成を問う投票がすでに実施されており、この与党連合が合併して一つの政党となる可能性が高まってきた。アビィ首相は、この新党の名称を「Prosperity Party」とする旨発表している。 他方、この合併に反対を表明しているのがTPLFである。TPLFの議員のひとりは、アビィが正当な手続きを踏んでおらず、この動きが非民主的なものであると批判している。 TPLFは、1989年のEPRDF結成時にその中核となった政党であり、1991年に軍部主導の社会主義政権を打倒し、TPLFのメレス・ゼナウィが政権の座に就いてから、長らくEPRDFの中枢にあった政党であるが、昨年アビィが首相に就いてからは、その影響力を弱めてきた。 この合併への参加を巡りTPLFは岐路に立たされているとの見方もある。進展次第では、合併から外れて来年5月の選挙で野党に転じることもありうるだろう。選挙に向けてエチオピアの政党再編がどのように展開するか注目したい。

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エチオピアで新たな自治州設置に向けた住民投票

2019/11/20/Wed

2019年11月20日、エチオピア南部にて、シダマ人による自治州の設置を問う住民投票が実施される。南部諸民族州シダマ地方に暮らすシダマ人らは、現在の行政区分である「地方(zone)」から「州(region)」への格上げを政府に求めて、抗議デモなどを継続してきた経緯がある(参照:「今日のアフリカ:エチオピア・南部諸民族州での抗議デモ」(2019/7/21日付)。 シダマはエチオピアで5番目に多くの人口を抱える民族集団であり、同国の人口の4パーセントを占めるとの統計もある。今般の住民投票で住民の合意が得られその後うまく進展すれば、自治州への格上げが叶い、シダマの人々を中心に運営されるエチオピアで10番目となる州政府が誕生することとなるかもしれない。そうすれば、州内の税制、教育、安全、法などを自ら取り決める権利が付与される。 シダマの人々は長年、自治州への格上げを求めて抗議を続けてきたものの、過去の政権下でこれが結実することは無かった。現下のアビィ政権下で、このシダマの人々の運動がどのように展開するか国内の関心は高い。また、これが認められれば、国内各地で同様の動きが起こることは必至であるようにも思われ、その先には政治行政単位が細分化していく未来もあり得るかもしれない。今般のシダマの住民投票は、この先のエチオピアの中央と地方の関係や、同国の民族自治の在り方に関わるものである点で重要だろう。 参照サイト: https://www.reuters.com/article/us-ethiopia-politics-sidama/test-for-ethiopias-reforms-as-sidama-people-vote-on-autonomy-idUSKBN1XS21P

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コンゴ東部の治安問題とチセケディ大統領の政権基盤

2019/11/18/Mon

フランス国際放送(RFI)は、15日夜、コンゴ民主共和国東部ベニ近郊で14人の民間人が殺害されたと報じた(16日)。この地域では近年、民間人が何者かに虐殺される事件が多発しており、コンゴ政府や国連は、もともとウガンダの反政府武装勢力であったADF(Allied Democratic Force)の仕業とみて、ここ数か月は大規模な掃討作戦を進めていた。今回の事件は、これに対する報復とみられる。ADFによる治安悪化は、この地域でエボラの蔓延が収まらない原因の一つともなっており、コンゴ政府も国際社会も危機感を深めている。12日には、フランスで開催された平和フォーラムに参加したチセケディ大統領と会談したマクロン仏大統領は、コンゴ東部の武装勢力に対してフランスが軍事的支援を行うことを確約した(13日付ルモンド)。  この間チセケディは、積極的な外交を展開している。国内基盤が脆弱なチセケディにとって、外交は自らの政権基盤を強化するための重要なツールである。今年1月の就任以来、訪問国はすでに20か国に達したという。これにより、上述のフランスの支援や4年ぶりとなるIMFからの融資を引き出す成果はあった。一方、11月中旬には117人を連れてウガンダを訪問したとのことで、予算を浪費しているとの批判もある。コンゴの人権NGOのLuchaは10月、「共和国移動大統領フェリックス・チセケディは、本日コンゴ民主共和国を公式訪問した」と皮肉った。国内の問題にもっと目を向け、国内各地域を訪問してほしいという声は支持者内からも高まっている(11日付ルモンド)。  中央および各州の議会や行政がカビラ前大統領に近い勢力で占められている現在、チセケディ自身のパフォーマンスを発揮できる場は国内に乏しい。とはいえ、外遊を繰り返すだけでは、国内の支持者さえ離れてしまう可能性がある。政権基盤の弱い大統領のジレンマである。

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CFAフランの行方

2019/11/16/Sat

11月7日、ベナンのタロン大統領は、RFI・France24のインタビューに答えて、フランスにおけるCFAフランの外貨準備を引き出す意向だと述べた。タロンによれば、UEMOA(西アフリカ経済通貨同盟)の中央銀行BCEAOが外貨準備の全額を管理し、各国にあるUEMOAパートナー銀行に配分するという。現在、CFAフランの仕組みでは、外貨準備の半分がフランス中銀に預金され、残りが2つのフラン圏の中銀(BCEAOとBCEAC)で管理される。この制度によって、CFAフランはユーロと無制限の交換性を担保されている。  タロン大統領は、速やかに外貨準備をアフリカ側に移すと述べ、アフリカ関係各国がこの意向を共有していると強調した。しかし、現在までアフリカ各国の首脳からこれに対するコメントは何もない。  CFAフラン体制は、フランスと旧仏領植民地諸国との間で1958年に設立され、1994年までは1フランスフラン=50CFAフラン、それ以降は1フラン=100CFAフランの交換レートを維持してきた。フランスの通貨がユーロに変わった後も、そのレートを維持する形でユーロと固定相場を保っている。この通貨体制については、通貨の安定性を評価する声と、植民地期の遺制だと反発する声で二分されてきた。11月15日付ルモンド紙は、タロン氏の主張は技術的に可能だが、CFAフランが持つユーロとの無制限の交換が疑問視されるとのエコノミストの指摘を掲載している。CFAフランのユーロとの交換性に関する信頼が揺らぐ事態となれば、各国ともそう簡単に現状変更の意思決定はできないであろう。  フランス経済相Bruno Le Maireは、フラン圏諸国の過半数が改革を望むなら、フランスはそれに従うと述べている。一方、ECOWASは2020年に共通通貨Ecoの導入を発表しており、ナイジェリアはその場合にフランスとの関係を断ち切るよう主張している。最近、CFAフランをめぐる問題が頻繁に取りざたされるようになった背景には、アフリカ諸国の経済成長やこうした新たな経済統合・通貨統合の動きがある。通貨は常に主権にかかわる問題だが、アフリカ諸国がどのような判断をするのか注目される。

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サヘル情勢の展開

2019/11/12/Tue

10月末以降、イスラーム急進主義勢力との関係で、サヘル関係の報道が相次いだ。10月28日(月)、トランプ米大統領はイスラム国(IS)の指導者バグダディの死を発表し、その3日後にはISがそれを認めて後継者を発表した。フランスのパルリー軍事相も、5日、西アフリカで活動するイスラーム急進主義勢力の一つ「イスラームとムスリムを支持するグループ」(GSIM)のNo.2であるモロッコ人アリ・マイシュ(Ali Maychou, alias Abou Abderrahmane Al-Maghrebi)を10月初めに殺害したと発表している。  米仏がイスラーム急進主義勢力指導者殺害の戦果を誇るのと時を同じくして、マリとブルキナファソでは急進主義勢力による攻撃が続いた。1日(金)にはマリ北東部の軍キャンプが襲撃され、マリ軍兵士約50名が殺害された。また翌日には、装甲車に対する爆破装置の作動で、フランス軍の兵士1名が殺害された。これらの事件に対して、ISの西アフリカ支部が犯行声明を出している(11月3日付ルモンド)。  ブルキナファソでは、4日に北部で憲兵隊の支所が攻撃され、憲兵5人、市民5人が殺害された。6日には、モントリオールに本社を置く金鉱山企業Samafo社の従業員が乗った車両に攻撃があり、40人近くが死亡、60人以上が負傷した。この金鉱山にはこれまでもイスラーム急進主義勢力による攻撃が繰り返されており、今回もその関与が確実視されている。  マリ中部とブルキナファソとの国境付近では、フラニ(プール)人を中核とするイスラーム急進主義勢力の活動が活発化しており、これに対する掃討活動、自衛活動としてフラニ人コミュニティが攻撃されるなど、コミュニティ間の衝突、対立が顕著になっている。特に、ドゴン人の秘密結社組織が民兵化し、フラニ人と衝突している。  一方、4日付ルモンド紙は、ブルキナファソで反仏感情が強まっていると指摘している。同国では9月以来、仏軍がブルキナファソ軍を支援して急進主義勢力掃討にあたっているが、国民の中に根強い反仏、反Minusma(国連PKO)意識がある。フランスは自分たちに国に軍を駐留させ、資源を奪っているという意識である。   急進勢力は集権的な組織ではなく、指導者の殺害によって活動が顕著に弱まるとは考えられない。今日、急進勢力の活動はコミュニティ間の衝突に転化し、多大な犠牲を生んでいる。ISやアルカイダの名を用いたグローバル・ジハディズムは、西アフリカやもっとローカルな文脈での紛争、対立と結びつきながら展開する。軍事的活動の限界が指摘されて久しく、国連やG5サヘルなど様々な枠組みで安定化に向けた努力がなされているが、事態の改善に結び付いていないのが現状である。

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ソーシャルメディアを通じた情報操作

2019/11/09/Sat

10月31日付ルモンド紙によれば、フェイスブックは、アフリカの複数国で、ロシアによる情報操作が行われていたと発表した。これに伴いフェイスブックは、53のページ、7つのグループ、5つのインスタグラムアカウントを閉鎖した。発表によれば、フェイスブック、インスタグラムの複数のアカウント、ページ、グループが、ロシア大統領に近いとされる実業家エフゲニー・プリゴジン氏に結びついていた。プリゴジンは、2016年米国大統領選挙において、反クリントン、親トランプのキャンペーンを行ったとされ、米国財務省による制裁対象となっている。プリゴジン氏はまた、ロシアの民間軍事企業で中央アフリカに傭兵を送ったとされるWagner社にも資金提供をしている。ツイッターやワッツアップでも同様の情報操作があったという。  情報操作の対象は、コートジボワール、コンゴ民主共和国、中央アフリカ、カメルーン、マダガスカル、モザンビーク、スーダン、リビアであったとフェイスブックは述べている。閉鎖されたアカウントには、475,000のアカウントがフォローしていた。中央アフリカのアカウントはロシアの存在を称える内容があり、リビアでは、ハフタル将軍とカダフィの息子の一人を支持する内容が書き込まれていた。マダガスカルでは、ラジョエリナ(Andry Rajoelina)が2月の大統領選挙に勝利した後、当該アカウントが活発にその支持を訴えた。  この報道が示すのは、ソーシャルメディアを通じた情報操作が世界各地で行われていることである。こうした情報操作には、ロシアに限らず、現地の政治アクターを含む多様な主体が関わっていると見るべきだろう。結局のところ、問われているのは、情報に対する私たちのリテラシーである。

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南スーダン暫定政府設立期限と外部の圧力

2019/11/07/Thu

南スーダンの暫定政府立ち上げ期限まで一週間を切った。11月5日、サルバ・キール南スーダン大統領は国民議会の場で、新たな暫定統一政府を期限までに設置したいとする自身の立場を強調した。 他方、キールの勢力と争ってきたSPLA/M-IO(スーダン人民解放軍/運動・野党派)は、先月、キールとともに新たな政府をつくる準備は不十分である旨を述べて、その延期を訴えた。 米国はすでに制裁を示唆して、この暫定政府の設立に向けて圧力を強めている。今後、欧米諸国や周辺国が、ラストミニッツでの駆け引きを加速させていくことは十分に考えられる展開であろう。 しかし、ここで思い起こしたいのは、2016年7月に首都ジュバで生じた軍事衝突である。2015年に、和平合意(ARCSS)に署名したキールは、署名の翌月の国民向け演説で、それが双方の「真正な合意」にあらず「押し付けられた取引」であるとして、圧力を強めて署名へと導いた他国の関与を批判した。その演説で、「平和ではなく恐怖の要素が、かなりの程度予測可能となる」とキールが述べたことは、今となれば2016年の軍事衝突を先取りする呪詛のように受け取れる(参照:松波2019)。 国際社会や周辺国がたくみに飴と鞭を使えば、期限までに南スーダンの暫定政府はかたちになるのかもしれない。しかし、新たな政府を運営することになる紛争当事者の納得が不十分なまま、外部からの圧力で形式的にそれが達成されるだけでは、2016年の悪夢が再来するだけではなかろうか。その教訓を生かす時節にあるように思う。

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南アフリカの多様な現実

2019/11/03/Sun

2日、横浜で開催されたラグビー・ワールドカップの決勝戦で、南アフリカのナショナルチーム・スプリングボックスがイングランドを下し、世界チャンピオンの座を掴んだ。インタビューを受けた南アの選手や監督が一様に、南アには様々な問題があるが、だからこそ国民のために勝ちたかったといった趣旨のコメントをしていたことが印象的だった。  そうしたコメントを裏書きするように、最近の南アは経済的苦境に喘いでいる。9月に大都市で勃発した移民排斥運動(ゼノフォビア)もその表れだが、特に注目されているのが国営電力会社Eskomの経営危機である。南アの電力の9割以上を提供するこの国営企業は巨額の債務返済に苦しみ、政府から何度も緊急融資を受けている。Eskomの経営危機の背景として、ANC内の路線対立が指摘され、事態は政治問題化している。  1日、米国の信用格付け会社Moody'sは、南アの投資格付けをBaa3に据え置くと発表した。Baa3は中級格付けの最下位に位置し、これより下は「投機的」と評価される。一方、格付けの見通しとしては、StableからNegativeに変更。ラマポサ政権が経済成長率の引き上げや債務増加への対応を誤れば、債券はジャンクと見なされるようになろうと警告した。南ア債権が投機的と見なされるようになれば、市場からの資金調達は困難になり、Eskomをはじめとする経済再建も見通しが厳しくなる。今回のMoody'sの発表は、南ア経済の現状がなお厳しいことを示している。  ワールドカップの優勝で世界に感動を与えるのも、経済危機やゼノフォビアに苦しむのも、南アの現実の姿である。実にアフリカらしいと思う。

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