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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2019年02月

マラウイのアルビノ・キリング

2019/02/21/Thu

2月20日付報道によると、政府の設置するタスクフォースの一員であったアルビノ支援団体(APAM)が同タスクフォースから脱退する旨を公表した。APAMの代表者は、マラウイ政府がアルビニズムを持つ人々(「アルビノ」)を守る意志を示していないと批判した。 マラウイは、タンザニア、コンゴ民、ブルンジ等と同様にアルビニズムを持つ人々を対象とした殺害(アルビノ・キリング)が報告されている国の一つであり、国際的な関心・批判の高まりを背景に、近年、これら殺害事件に対処するためのタスクフォースが設置された。アルビノ・キリングが行われる背景には、富や名声獲得といった「福」を招き入れるため、「アルビノ」の身体の一部を呪術に用いるという現地の文脈があることが知られている。 アルビノ・キリングは、「未開社会」で実践されている「前近代的迷信」と矮小化されがちだが、そのような認識には誤りがある(仲尾2016)。アルビノ・キリングは、むしろ近年多発している現象であり、現地を調査する人類学者のなかには、グローバル化した市場経済がこれら事件の活性化に影響していると主張するものも少なくない。新資本主義経済により、極端に貧富が拡大し、富の産出・損失が現地住民の視点からは見えなくなるといった特徴が、オカルト的な説明様式を必要とするという訳である。 また、同月14日付の報道によれば、チャクウェラ・マラウイ議会党(MCP)党首は「次の議会選挙で勝利した際には、1か月以内にアルビノ・キリングの問題を終わらせる」旨発言しつつ、現与党の現在の対応を批判した。それに対し、与党は、「アルビノの問題を政治利用している」とMCP党を非難するなど、選挙を前にアルビノ問題を巡って政治的攻防が展開されている。 このようにマラウイのアルビノ・キリングは、今日では、政治・経済との関係なしには説明できない問題ともなっている。マラウイの議会選挙は今年5月に行われる予定である。選挙に向けて、これがどのように展開するか注視したい。 参考:仲尾友貴恵2016「暴力と結びつく身体的特徴、その社会問題化過程について --タンザニアのアルビノ・キリングを事例に--」

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フランスによるチャド北部への空爆

2019/02/17/Sun

2月8日付ルモンド紙は、フランス軍参謀本部が2月3日~6日にチャド北部に軍事介入し、戦闘機による爆撃を行ったと報じた。これに伴い、フィリップ首相、ルドリアン外相らが上下両院で軍事作戦について説明した。外相の説明によれば、デビィ大統領から発出された文書による要請に基づき、リビア南部から侵攻した武装勢力に対して空爆がなされた。チャドにおけるクーデタを防ぎ、国家を防衛するため、とのことである。 14日付ルモンド紙は社説で、チャドへの軍事介入をめぐるジレンマについて論じている。チャドはサヘルの地政学上、極めて重要な位置にある。北のリビア、東のナイジェリア(北東部)、南のカメルーン、中央アフリカ、西のダルフール、南スーダンと、チャドの周囲はいずれも政治的に不安定である。フランスがサヘル地域で実施している軍事作戦(バルカンヌ作戦)にしても、チャドに大きく依存している。一方で、チャドのデビィ政権は顕著に権威主義的性格を帯びている。今回リビア南部から侵攻した武装勢力は、国内の反政府勢力であった。フランスは2008年にもデビィ政権を防衛するためにチャドに軍事介入したが、独裁政権を支援しているとして、チャド国内の野党勢力から強い批判を浴びている。 この種のジレンマはアフリカの至る所で見られるが、一般論として非常に難しい問題である。しかし、今回の空爆はずいぶん唐突な印象を受ける。首都から遠く離れた地域への爆撃だし、デビィ政権が大きく揺らいでいたわけでもない。中央アフリカのボジゼ政権のようになっては遅すぎるので、早めに手を打ったということだろうか。今回の一件は、フランスがいかにデビィ政権に依存しているかを示している。

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ナイジェリア大統領選挙

2019/02/16/Sat

ナイジェリアでは2月16日に大統領選挙が予定されている。2億人近い人口を有するアフリカ最大の産油国は、1999年の民主化以降、曲がりなりにも民主主義を維持してきた。前回2015年には野党候補ブハリが勝利し、選挙を通じた政権交代を遂げた。これまでは選挙のたびに暴力が発生し、数百~千人規模の死者が出ていたが、今回は2月13日に2人の主要候補が「平和協定」に署名し、平和裏な選挙実施を呼びかけた。 今回の選挙はそれほど盛り上がっているとは言えないようだ。現職のブハリは76歳。清廉な元軍人というイメージで前回は勝利したが、第1期目は目立った成果を上げられず、ロンドンでの長期入院が話題となった。期待されたボコハラム対策も、あまり進んでいない。対立候補のアブバカル(Abubakar Atuku)も長年政界、実業界で活躍した大立者で、当選しても大幅な刷新は期待できないとの評判である。 選挙前日になって、ロジスティクス面の不備から選挙延期の可能性が高まっているとのニュースが報じられた(ファイナンシャルタイムズ紙)。これは珍しいことではない。2011年の大統領選挙はロジ面、治安面の理由で1週間、2015年にはボコハラムの影響で6週間延期された。ナイジェリアは自分のペースで事を進める国である。国際社会を含め、こうした遅れはそれほど問題視されていない。確かに、ナイジェリアの人々が納得できるペースで事を進めることが一番だ。(パリ時間の16日午前3時配信のルモンド紙電子版は、1週間延期されて23日の実施となったと報じている。選挙延期が当日未明に決定されたようだ。)

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ソマリアで米軍による空爆が急増

2019/02/11/Mon

8日付FDD's Long War Journalの記事によれば、トランプ政権下で米国によるソマリアへの空爆が急増している。アルシャバブを標的としたもので、1月には100人以上の戦闘員が殺害され、これまでで最大の数だという。オバマ政権下においては、米軍が本格的に介入した紛争地域以外での空爆は複数の省庁による協議が必要とされ、米国にとって「継続的かつ喫緊の脅威」が認められる場合にのみ許可された。しかし、トランプ政権下この方針は転換され、空爆の頻度は急増した。オバマ政権期には数少ない回数の爆撃でアルシャバブ幹部の殺害を狙ったが、トランプ政権になって攻撃対象は一般兵士にも広がった。空爆は2015年まで年間3回以下だったが、2016年に15回と急増し、17年に31回、18年には47回に増えた。今年に入って2月8日までに14回の空爆が行われている。 アルシャバブは2011年に首都モガジシオの支配権を失い、軍事的には劣勢が伝えられている。しかし、今年に入ってからも、モガジシオのみならずケニアの首都ナイロビ近郊でも一般市民を狙ったテロ攻撃を行うなど、活動が鎮静化したとは言い難い。米軍の空爆によりアルシャバブ側の犠牲者は多数に上っているが、そのほとんどは一般兵士で、少し訓練すれば前線に送り出すことができる。 米軍元幹部は、この空爆がアルシャバブの打倒を目的とするものではないと認めている。先週開かれた米国上院軍事委員会(Armed Service Committee)で、AFRICOMの元司令官 Thomas Waldhauser海軍大将は、「空爆によってアルシャバブに勝利することはできないが、ソマリア連邦政府と同国軍に治安維持任務の機会を提供できる」と述べている。空爆は、ソマリア連邦政府の治安維持能力構築のためだ、というわけである。同氏はまた、「空爆は問題を引き起こす。一方それは抑止力にもなる。どっちにどの程度の影響が出るかは、オープン・クエスチョンだ」とも述べている。 元幹部だけに率直な発言である。しかし、例えばアフガニスタンの経験を考えても、こうした米軍の支援がソマリア連邦政府軍の能力構築に繋がるのか、大きな疑問を感じざるを得ない。空爆がアルシャバブの一般兵士に植え付ける怨恨の方が、戦闘に対する強い動機付けになるのではないだろうか。

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2019年アフリカ経済見通し

2019/02/10/Sun

2月8日付アフリカ・コンフィデンシャル誌は、2019年のアフリカ経済見通しをまとめている。それによれば、資源価格低迷の影響で石油輸出国の成長は低迷し、南ア経済も低迷が続く見込み。最も経済成長見通しが高いのはエチオピアで、アビィ政権の改革路線が対外的にも評価され、投資流入が見込まれている。それに続くベスト5は、ルワンダ、コートジボワール、ガーナ、タンザニアで、地域的にはアジア諸国との結びつきを背景に東アフリカ諸国の経済が好調である。ケニア、ザンビアといった国々で債務問題の深刻化が懸念されているが、財政収支は総じて改善傾向にある。石油をはじめとした鉱物資源輸出に依存しない国々が、アジアとのつながりに基づいて経済成長を加速させるという構図は、アフリカ経済の新たな成長モデルを示すのかも知れない。注目に値する現象である。

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ルワンダ虐殺とフランス

2019/02/09/Sat

2月7日にルモンド紙がキャリーした仏通信社メディアレポート(Mediareport)とラジオフランスの報道(6日付)によれば、フランスの対外諜報機関DGSE(Direction général de la séurité extérieure )は、1994年4月6日のルワンダ・ハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件がハビャリマナ大統領派急進派の犯行であるとの見解を内部でまとめていた。この報道はDGSEの資料開示に伴うもので、1994年9月にまとめられた資料では、テオネスト・バゴソラとローラン・セルブガという2人の国軍中枢の「フトゥ急進派」が大統領搭乗機撃墜事件の首謀者だとして名指しされている。  この報道はフランスとルワンダの関係を考えるうえで、きわめて重要である。ハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件は、ジェノサイドの引き金となった一方で、その首謀者は今日に至るまで判明していない。そして事件直後から、ハビャリマナ政権内急進派犯行説と内戦時の敵対勢力RPF(現ルワンダ政権与党)犯行説の異なる見解が対立してきた。こうしたなか、当時から仏政権の有力者は総じて、犯人がRPF側だとの見解を示してきた。よく知られているように、仏予審判事はこの事件の首謀者がRPF中枢だとして、カガメ現ルワンダ大統領(内戦当時RPF総司令官)側近複数名を起訴し、両国の国交断絶を招いた。その後、昨年12月になって、仏司法が起訴を断念した経緯がある。  DGSEは米国で言えばCIAに相当する機関であるから、それがルワンダ内戦終結の直後から仏政権主流派と異なる見解を持っていたことはきわめて興味深い。DGSEの見解が表に出なかったのはなぜか。ミッテラン政権高官が揃ってRPF犯行説に組したのはなぜか。DGSEに首謀者として名指しされた2人のうち、バゴソラは国連安保理が設立したルワンダ刑事裁判所で懲役35年の刑を受けて服役中だが、後者は仏国内に居住しており、仏当局はルワンダへの引き渡しを拒んでいる。  ルワンダのカガメ政権は、一貫してフランスがジェノサイドに加担したと主張してきた。フランス政府はこれを一蹴し続けてきたわけだが、7日付ルモンド紙は、ジェノサイドにおけるフランスの役割を検証すべきだとの同国NGO関係者の声を紹介している。1994年当時の仏当局の振る舞いについて解明を求める声は、国内外から高まってくるだろう。

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南スーダンにおけるSPLM再統合の動き

2019/02/06/Wed

昨年、新たな和平合意(R-ARCSS)が署名された南スーダンで、先月末からSPLM再統合に向けた動きが見られる。報道によれば、1月30日、SPLM-FD代表者は政府与党(SPLM-In-Government: SPLM-IG)に合流する意向を示した。SPLM-FDは、2013年に政府によって拘束され、その後国外に脱出した高官らによって組織されたグループであり、また、昨年R-ARCSSに署名した当事者4グループの1つでもある。 SPLMの再統合に関しては、タンザニアがその合意プロセスを主導してきた経緯がある(アルーシャ・プロセス)。2015年に、SPLM-IG、SPLM-FD、SPLM-IOが同合意に署名し、一部FD要員が政府幹部として復帰したものの、それ以後大きな進展は見られなかった。それゆえ、今般の統合のニュースは、アルーシャ・プロセスの進展として歓迎されるべきものである。R-ARCSS履行にも良い影響を与えるように期待したい。 他方、一部報道は、SPLM-FDのメンバー間に意見の不一致がある可能性を指摘しており、これが事実であれば新たな分裂が生じる不安も拭えない。SPLMが結成以降、権力者同士の取引と生存戦略の結果として離合集散を繰り返してきたことに鑑みれば、この再統合の動きに満足しない要員の今後の動向には注意を払う必要がある。同国の情勢については、R-ARCSSの合意枠組みに含まれない反政府勢力と政府軍との戦闘行為も報告されているなど、楽観視できない状況が続いている。

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バボ前コートジボワール大統領、ICC無罪判決後にベルギーが受入れ

2019/02/06/Wed

バボ前大統領とブレ・グデ前愛国青年運動指導者は、2011年の政治危機後、国際刑事裁判所(ICC)に拘束、起訴されていたが、1月15日に無罪判決が下された。しかし、2月1日、ICCは釈放を条件付きとすることとし、事実上バボらが帰国することを禁じた。その後、家族が居住しているとの理由でベルギーが受入れを表明し、5日バボらが同国に移動したことが確認された。 昨年6月、ベンバ(元コンゴ民主共和国副大統領)に無罪判決が下されたことに続き、今回の措置はICCにとって大きな痛手である。1月18日付ルモンド紙は、バボらの逮捕に際して、バボの政敵ワタラ(現大統領)を支援していたフランスがICCに影響力を行使したと報じている。政治的意図が優先され、十分な裏付けのないまま逮捕、起訴が進められたというのである。ICCは捜査力が乏しく、実際の捜査にあたっては各国の警察などに頼らざるを得ないというのは、以前から指摘されていた。今回はそこにフランスの政治的意図が入り込んだ、ということだろう。 今回の決定は、国際的にも、国内的にも大きな影響を有する。ベンバに続く無罪判決で、ICCへの信頼が一層揺らぐことは避けられない。モレノ=オカンポ検事総長時代のICCの姿勢が、問い直されることになるだろう。国内的な影響も大きい。当面バボ自身の帰国はないとはいえ、関係者が大挙して帰国しており、バボが率いた政党FPIは勢いづいている。一方、ワタラ大統領派からは、かつて同盟を組んだベディエ、そして彼が主導するPDCIが離脱し、内戦時にワタラ派を軍事的に支えたソロ(国会議長)も袂を分かった。この先、次の選挙に向けて、コートジボワールの政治情勢はさらに流動化していくだろう。

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