• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

今日のアフリカ

今日のアフリカ

セネガルの民主主義

2024/03/16/Sat

 マッキー・サル現大統領の後任を選ぶ大統領選挙を、いつ、どのように実施するのか。この点をめぐってセネガルは、ここ1ヶ月あまり大揺れに揺れた。今のところ、3月24日の大統領選挙実施が確実になりつつある。この間の動きは、セネガルの民主主義をめぐる評価も二転三転させるものだった。
 事態が急展開するのは、1月20日に憲法評議会(Conseil constitutionnel)が当初2月24日に予定されていた大統領選挙立候補者の資格審査結果を発表してからである。この資格審査では、ウスマヌ・ソンコやカリム・ワッドらが立候補資格を認められなかった。これに反発したカリム・ワッド陣営が、憲法評議会構成員に汚職疑惑があるとして、資格審査のやり直しを求めた。これを受けてマッキー・サル大統領が、2月3日、選挙の延期を宣言したのである
 自身の後継者であるバ(Amadou Ba)首相が不人気で、ソンコの支持を受けたバシル・ジョマイ=ファイ(Bassirou Diomaye Faye)に勝てないと見たマッキー・サルが、時間稼ぎのために選挙を延期したと推測されている(2月6日付ルモンド)。
 これに対して、憲法評議会は2月15日、大統領選挙の延期は違法で無効だとの判断を下す一方、2月24日に予定どおり選挙を実施することは現実的でないとして、「適切な時期」に選挙を実施するよう求めた。この頃から政権側は、野党側を軟化させるため、収監されていた野党勢力の恩赦と解放を進めていった。
 この段階では、マッキー・サルの任期が切れる4月2日以前の選挙実施を主張するソンコ派らの野党勢力と、4月2日にこだわらず資格審査から選挙プロセスをやり直すべきだと主張するカリム・ワッドや大統領陣営とが対立した。2月26-27日に実施された「国民対話」では、ワッド派ら一部野党しか出席しなかったものの、6月2日の選挙実施を決めた。
 しかし、3月6日、憲法評議会は、大統領任期満了以降に選挙を実施することは違法だとの判断を下し、結局3月24日選挙実施案が承認された。また、議会で承認された恩赦法によって、14日には収監されていたソンコやジョマイ=ファイが釈放された。
 選挙日程をコントロールしようとしたマッキー・サル大統領は、司法判断によってその意図を挫かれ、投票日まで残り9日というタイミングで最も有力な野党候補者を釈放することになった。当然ながら、ソンコ、ジョマイ=ファイの陣営は大変な盛り上がりで、このまま投票に突入すれば、大勝する可能性が高い。
 サルが選挙日程延期を発表し、抗議デモに厳しい態度で臨んだときには、セネガルの民主主義に対する懸念が広がったが、その後の展開を見ると、民主主義は思いのほかレジリエントである。司法(憲法評議会)の判断が、強い決定力を保持している。
 西アフリカの複数国にクーデタが広がるなか、もしセネガルが政治混乱に陥れば、甚大な負の影響をもたらしかねない。胸をなで下ろしている人も多いことだろう。
(武内進一)