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今日のアフリカ

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コンゴ東部紛争の民兵組織

2023/12/15/Fri

 13日付ルモンド紙は、コンゴ東部紛争の民兵組織ワザレンド(wazalendo)に関する記事を掲載した。ワザレンドはスワヒリ語で「愛国者」を意味する。ルワンダから支援を受けているといわれるM23への対抗勢力として、注目を浴びるようになった。
 ワザレンドがメディアに登場したのは、ここ二ヶ月程度のことに過ぎない。M23との戦闘を主導する勢力として報じられるようになった。この背景には、昨年9月に展開を開始した東アフリカ共同体地域軍(EACRF)の撤退に伴う情勢変化がある。EACRFはM23が制圧していた地点を引き継いで平和維持に当たっていたが、M23が活動を停止せず、地域住民やコンゴ政府側からの不満が高まっていた。結局チセケディ政権は、EACRFが成果を上げていないとして10月にその任期を更新しない決定をし、12月には部隊の撤収が始まった。撤収後の主導権をめぐってM23と政府側との衝突が激化するなかで、ワザレンドは政府軍と協働してM23と戦っている。
 記事によれば、ワザレンドとは、従来マイマイなどの名称で呼ばれていた多数の武装勢力を糾合したもののようだ。ただし、そうした武装勢力の糾合は、政府が働きかけたものである。2022年11月、チセケディは国営テレビで演説し、M23に対抗して自警団グループを立ち上げるよう国民に呼びかけた(2022年11月4日付ルモンド)。また、コンゴ軍と民兵組織の協働も、2023年9月3日の政令で、国軍内に民兵の存在を制度化することによって、公式化された。ワザレンドは、来週に予定されている大統領選挙でチセケディに投票するよう呼びかけているという。
 コンゴ軍は20年前の東部戦争の際にも、ルワンダのフトゥ人を中心とする武装勢力(FDLR)と協働するなど、従来から民兵組織との関係が取り沙汰されてきた。チセケディ政権はその公式化に動いたのである。国連平和維持活動を担うMONUSCOも撤退へと動くなか、チセケディ政権の論理としては、ルワンダが支援する勢力に自前で対抗する、ということになる。ルワンダを敵として愛国心を煽り、民兵を動員する手法は、相当に危うい。
(武内進一)