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今日のアフリカ

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チュニジアでゼネスト

2022/06/18/Sat

 チュニジアの労働組合ナショナルセンターである「チュニジア総労働組合」(UGTT)は、16日、公的セクターに24時間のゼネストを指令した。指令は広く遵守され、航空会社や鉄道・運輸など多くの機関が全面的に麻痺した。チュニジア政府はIMFから新規融資を得る条件として経済改革を迫られており、ストライキはこの改革に反対して実施された。ウクライナ危機の影響を受け、チュニジアではインフレが昂進するなど生活が厳しくなっており、UGTTは改革に反対の姿勢を強めている。
 ストライキは、サイエド大統領の置かれた厳しい立場を示している。前大統領の死去に伴い2019年に選出されたサイエドは、昨年7月に議会活動を凍結し、首相を解任する挙に出た。政党対立が続き、議会での審議が進まないことに国民が苛立ち、議会解散を求める中で、大統領に政治的権限を集中させる動きであった。議会側からはクーデタだと批判されたが、抗争に明け暮れる既存政党に嫌気がさしていた国民の多くは、この動きを支持した。
 昨年12月には、議会凍結を2022年12月まで延長すること、2022年7月25日に憲法改正の国民投票を行うことを発表した。大統領権限の強化を含む新たな政治体制を支える憲法を国民に承認してもらい、その後議会選挙に臨むという考えであった。
 しかし、当初サイエドの行動を支持していた国民は、その強権化の動きに対して次第に反発を強めている。顕著なのはUGTTの動きである。このナショナルセンターは、チュニジアで大きな影響力を持つ。2015年には「アラブの春」に果たした役割を評価され、国内の人権団体などとともにノーベル平和賞を受賞している。UGTTは当初サイエドの動きに好意的だったが、次第に距離を置くようになり、最近では、憲法レファレンダムに向けた「国民対話」への参加を拒否している。
 今回のゼネストは経済問題を前面に掲げるもので、サイエドの政治のあり方が直接の争点になっているわけではない。しかし、IMFとの交渉の行方が一ヶ月後に迫ったレファレンダムに影響を与えることは必至である。政府の対応によっては、政治的混乱が深まることになろう。