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今日のアフリカ

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スーダン:文民首相の復帰と市民社会の反発

2021/11/23/Tue

 11月21日、スーダンの首都ハルツームで、先のクーデタで失脚したハムドクの首相復帰が発表された。10月25日のクーデタを主導した政権トップのブルハーン将軍とハムドクは、共同で記者会見に臨み、両者の間で協定に合意したことを明らかにした。協定は14項目からなり、ハムドクの首相復帰の他に、政治犯の釈放などが合意された。
 自宅軟禁状態に置かれていたハムドクは、クーデタ以降初めて公の場に姿を現したが、これ以上の流血を避けるために協定に合意したと説明した。ブルハーンは、ハムドクをいつも尊敬してきたとして、この協定が民主化への移行の完全な実施に道を開くと述べた。ファイナンシャルタイムズ(22日付)は協定について、一部市民は反対するだろうが、仕方のない妥協だという街の声を紹介した。米、英、EU、ノルウェーなども、ハムドクの首相復帰を歓迎した。
 一方で、市民運動の中核である「自由変革の力」(Forces of Freedom and Change:FFC)は、この協定を「受け入れない」と表明した。FFCは2019年のバシール政権打倒の中心となった市民運動体で、ハムドク首相の後ろ盾となってきた。彼らは、クーデタを遂行した者たちとの交渉やパートナーシップはあり得ない、協定はハムドクが一人で決めたことだとして、これを全面的に拒否し、デモを続けている(22日付ルモンド)。クーデタによって罷免された市民派の元閣僚も、FFCの動きに同調する動きを見せている。
 クーデタ勃発以来、デモ隊の死者は先週半ばで39人に達している(17日付ルモンド)。これ以上の流血を避けたいという動機をハムドクが抱くことは理解できる。しかし、その思いは受け入れられなかった。FFC側の軍への不信がそれだけ強いということであろう。ハムドクは孤立し、市民運動は彼から離れて軍と激しく対峙する方向へと進むことになる。