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今日のアフリカ

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エチオピア情勢緊迫

2021/11/07/Sun

 内戦勃発からちょうど1年となるなか、エチオピア情勢が緊迫している。10月31日、反政府武装勢力のTPLFはアムハラ州の要所デシエ(Dessie)とコンボルチャ(Kombolcha)を制圧したと発表した。いずれも首都アジスアベバとティグライ州の州都メケレを結ぶ幹線道路沿いにあり、両都市の中間ほどに位置する町である。内戦勃発以来、北部への報道関係者の立ち入りが制限されており、戦闘状況の把握が困難であったが、この発表によって反乱軍側が予想以上に首都に近づいていることが明らかになった。エチオピア政府は、11月2日、全土に非常事態宣言を発出したが、これによって政府の苦境が裏付けられた形となった。
 TPLFは、3日には、コンボルチャからさらに南に下ったキミセ(Kimise)に到達し、連合を組むオロモ解放軍(OLA)と合流した。5日には、TPLF、OLAを含む9つの反政府武装勢力が、アビィ政権を倒すための「連合戦線」を結成した(5日付ルモンド)。日本、米国などは、自国民に対して出国を勧告している。
 4日、米国のフェルトマン(Jeffrey Feltman)特使がアジスアベバに入り、停戦に向けた交渉の仲介を行っている。しかし、これまでのところ、政府、TPLF双方ともに、交渉に応じる姿勢を示していない。また、両勢力とも、深刻な人権侵害を犯していると批判されている。
 ファイナンシャルタイムズの論説は、「これほど短期間で、ある国の評価が劇的に変わることも珍しい」と述べている(4日付)。エチオピアは2000年代から10年以上も高水準の経済成長を続け、新たな開発モデルの可能性を示すと見なされていた。アビィ政権の誕生とエリトリアとの和平、そしてノーベル平和賞の授与は、希望的観測を確たるものにするかと思われた。残念なことに、そうした見通しは、政治権力をめぐる抗争と内戦勃発によって、はるかに遠のいてしまった。今日、エチオピア国家の分裂が現実味を帯びて語られている。ここに示されるのは、権威主義体制下の高度成長の脆さであり、国家建設の難しさである。