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今日のアフリカ

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フランス、対サヘル軍事政策の転換

2021/06/12/Sat

 10日、フランスのマクロン大統領はバルカンヌ(Barkhane)作戦の終了を宣言した。バルカンヌ作戦では、サヘル地域のイスラム急進主義勢力掃討を目的として、5000人以上の部隊を投入してきた。フランスはすでに、5月24日に起こったマリのクーデタを受けて、6月3日にマリ軍との軍事協力の中止を発表していたが、今回の措置はサヘル地域全体に対する、軍事政策の大きな転換点となろう。
 11日付ルモンドによれば、バルカンヌ作戦の終了は9日の国防評議会で決定された。1年のうちに部隊を全面撤退させるとの案もあったが、より段階的なやり方が選択された。すなわち、1)2022年初めまでに、マリにある通常部隊向け軍事基地を複数閉鎖、2)2022年夏までに部隊の人員を3割削減、3)2023年初めまでに部隊を半分に削減し、2500人程度にする、というものである。
 この決定は、単なるクーデタへの対応ではない。2013年の介入開始以降、サヘル地域での軍事作戦で、フランス人兵士の戦死者数は50人に上っている。一方で、治安悪化はマリのみならずブルキナファソやニジェールなど、周辺国に拡大している。マリでは、治安悪化はフランスのせいだとして、反仏感情が高まりが報告されている。こうした状況下、バルカンヌ作戦の継続が政治的に困難になっていた。
 ルモンド紙の分析によれば、今回の目的は、マリにおけるフランスの軍事的存在を、通常部隊の「域外作戦」としてではなく、多国間協力の枠組みへと転換させることにある。フランス部隊の人員は削減するが、ヨーロッパは関与を続けるという。EUは、サヘル地域で、ロジスティクスの支援、研修ミッション(EUTM)、Takuba(マリ軍を支援する軍事タスクフォース)など複数の支援枠組みを持っているし、国連の平和維持部隊(Minusma)も展開している。フランスとしては、こうした枠組みを活用することを考えているのだろう。しかし、こうした枠組みの転換が対イスラム急進主義勢力に対してどの程度効果的なのかは、全く不透明と言わざるを得ない。