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今日のアフリカ

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ナミビアでジェノサイドをめぐる交渉に不満の声

2021/06/10/Thu

 8日、野党側は議会で、政府がドイツとの交渉を独占し、野党やヘレロやナマのコミュニティを遠ざけてきたと批判した。野党「土地なし人民運動」(Landless Peoples Movement Namibia:LPM)のアイサックス(Edson Isaacks)議員は、「政府がやったことはアパルトヘイト」だと批判し、「交渉は買いたたかれた」と述べた。また、別の野党「国民統一民主組織」(National Unity Democratic Organisation:NUDO)の指導者カウアンデンゲ(Josef Kauandenge)議員は、「ドイツとナミビアの政府間で署名されたのだろうが、ナマとヘレロの大多数は軽蔑とともにこれを拒否するだろう」と主張した(9日付ルモンド)。
 ナミビア首相は、野党の批判を受けて、国民の団結を呼びかけつつも、交渉に際して当該コミュニティ(ヘレロとナマ)への意見聴取が不十分だったと認めた。協定はナミビアとドイツの外相が署名し、その後ドイツ大統領が正式に謝罪することになっているが、具体的な日程は決まっていない。協定には補償として援助が盛り込まれているが、コミュニティ側は「侮辱的な」水準だと反発している。
 植民地期の清算をめぐる交渉は、しばしば被害国の国内政治に巻き込まれる。それは特に民主主義体制の下では、避けられないことかも知れない。この問題への対応は本当に難しいと思う。いずれにせよ、被害を受けたコミュニティに対して、ナミビア政府とドイツ政府が誠実な態度で接することから始めるしかない。