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今日のアフリカ

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ドイツ、植民地期ナミビアでのジェノサイドを認める

2021/05/29/Sat

 28日、ドイツのマース(Heiko Maas)外相は、1884~1915年に植民地統治を行っていたナミビア(南西アフリカ)のヘレロ人とナマ人に対する行為を「今日の観点から見れば『ジェノサイド』であった」と認め、公式に謝罪した。「我々は、ナミビアと犠牲者の遺族に許しを請う」として、30年にわたる総額11億ユーロの開発、再建プログラムを提示した。同時にマース外相は、それが法的な意味での賠償ではないこと、今回の謝罪が法的な補償金支払い要求に道を開くものではないことも明言した。
 20世紀初頭のナミビアでは、叛乱を起こしたヘレロ人とナマ人に対して、鎮圧に送られたドイツ軍のフォン・トロータ(Lothar von Trotha)将軍が絶滅政策を取った。20世紀初頭に人口の4割を占めていたヘレロ人は、現在は7%ほどに激減している。当時、殺戮のために用いられた手法には、強制キャンプのように、のちのホロコーストにつながるものもある。犠牲者の頭蓋骨は、人種的な科学実験のためにドイツに送られた。
 この問題の処理は、ナミビアとドイツの間で長く懸案となってきた。ドイツは、和解のために、2019年にヘレロとナマの遺骨を返還し、当時の外相が「心からの許し」を請うた。ナミビア側はこうした対応を不十分として公式の謝罪と賠償を求めたが、ドイツは独立以来多額の援助を行ったことを理由にこれを拒否してきた。今回、ジェノサイドが行われたとドイツ側が認めたことは、ナミビア側からも「良い方向の一歩だ」と評価されている(28日付ルモンド)。
 近年、植民地期の人権侵害が様々な形で光を当てられ、その克服が検討されるようになった。ドイツとナミビアの事例もその一環だが、「ジェノサイド」概念が重要な意味を持ったことが特徴的である。