17日、ルワンダの首都キガリでポール・ルセサバギナ氏の裁判が始まった。同氏は1994年のルワンダ・ジェノサイドの際に、キガリ市の高級ホテルの支配人の立場にあり、避難民を救うために尽力した。彼は、2004年に公開され世界的ヒットとなった映画『ホテル・ルワンダ』でモデルとして描かれたことで世界的著名人となったが、ルワンダ現政権には批判的で、1996年以来亡命し、ベルギーの市民権を獲得していた。昨年8月に逮捕され、その審理が始まったのである。
ルセサバギナ氏に対して検察は、テロリズム、殺人、反乱軍への資金出資など13の罪で告訴している。審理において、弁護人は同氏がベルギー国籍であることを理由に訴追が無効だと主張した。2003,2004年にルワンダを訪問した際にはビザを要求されたという。これに対して、同席した被告人の一人で、反乱軍FLN(Front de libération nationale)の指導者ンサビマナ(Callixte Nsabimana)は、「今になってルワンダ人ではないふりをするのは見苦しい」と批判したという(18日付Le Monde)。ピンク色の囚人服を着て出廷したルセサバギナ氏の裁判の模様は、New Times紙など政府系のメディアによっても詳細に報じられた。
裁判に先立って、米国はルワンダ政府に対して公平な審理を求め、EU議会はルセサバギナの解放を求める決議を採択した(11日)。一方、ルワンダ政府は、EU議会に対し、ルワンダの主権と裁判権に反するとして、決議の取り消しを求めた(16日付New Times)。
ルワンダ現政権は、批判者を様々な形で封じ込めてきた。逮捕、勾留、裁判は手法の一つであり、ルセサバギナ氏の親族は、公正な裁判は期待できないと批判している。