6日、コンゴ民主共和国のチセケディ大統領は約30分のTV演説を行い、「国民コンサルテーション」(consultations nationales)の終了を表明するとともに、前カビラ大統領派であるFCCと自らの基盤であるCachとの協力関係解消を発表した。約2年にわたって続いた同盟関係が終わりを告げることになる。
2018年末に行われた大統領選挙では大規模な不正が行われ、前大統領のカビラが、「扱いやすい野党候補」であるチセケディを勝たせた、と言われている。国際社会から疎外されたカビラ派が、トップはチセケディに譲ったうえで、「実を取る」作戦に出たといえる。同時に実施された選挙で、中央、地方の議会や知事はカビラ派のFCCが多数派を押さえた。
しかし、両者の溝は徐々に広がり、今年10月にはチセケディが、「国民コンサルテーション」を行うと宣言していた。これは実質的に、新たな協力関係を構築するための協議であった。
とはいえ、チセケディが思うように協力関係を築けてたわけではない。ベンバやカトゥンビなど会談に応じた有力者もいるが、2018年末選挙の真の勝者は自分だと主張し続けているファユルはチセケディの招きに応じなかった。カビラ派の議員たちがどこまで「寝返る」かは全く未知数で、議員1人の買収金額が7000ドルといった報道もある(11月27日付ルモンド)。
チセケディは、憲法に従い、多数派形成のための「情報収集ミッション」(mission d'information)を派遣すると述べている。これはコンゴ民主共和国憲法第78条に従った措置で、2か月を期限として、議会内で多数派工作を行うことが想定されている。これが不調に終わった場合には、議会の解散が検討されることになる。
チセケディとカビラの軋轢は、今年初めころから報道されてきた。政治権力機構をカビラ派が握る状況に変わりはないが、この間キンシャサに駐在する米国大使がチセケディに接近し、カビラ派との決別を勧めてきたと報じられている(11月5日付ルモンド)。
今後、カビラ派の切り崩しが活発化するだろうが、チセケディが議会で安定多数を握れるかは全くわからない。地方政府においても、カビラ派の影響力は簡単にはなくならないだろう。コンゴ内政は新たな局面に入ったが、その着地点はまだ見えない。