11月27日付のBBC Newsによれば、エチオピアのアビィ首相は、ティグライ州における政府軍の軍事作戦は州都メケレの攻撃という最終局面を迎えたと発表した。そのうえで、攻撃はメケレの市民を対象にしたものではなく、市民に外出しないように求めた。この発表に先立ち、エチオピア政府は、国際社会に対し、今回の戦闘に介入しないように求めている。一方、対立するTPLFのリーダーたちは、政府軍と最後まで戦い抜くと表明している。
ティグライ州における政府軍とTPLFの戦闘は発生から3週間が経過した。同州の通信網は依然として制限されているため未確認の情報は多いものの、Aljazeeraの報道では、これまでの状況が次第に明らかになっている。この戦闘は、11月4日にTPLFがティグライ州南西部にある連邦政府軍の軍事基地を襲撃し、それに政府軍が反撃することで発生した。政府軍は州西部に進軍したが、この時、ティグライ州の南に隣接するアムハラ州から多数の義勇兵が政府軍に参加した。
ティグライ州西部の町、マイ・カドラでは、9日に集団虐殺が起きた。この集団虐殺は、最初にアムネスティが報告し、14日から19日にかけてエチオピア人権委員会(Ethiopian Human Rights Commission: EHRC)が現地に派遣された。EHRCの報告によれば、少なくても600人の住民が殺害された。殺害された人々の民族的出自はさまざまだが、アムハラ系住民が多くを占めている。この殺害を行ったのは、TPLFを支持するティグライ人の若者グループという見方が有力だが、明確な証拠は示されていない。
エリトリアとティグライ州との国境の町、ヒメラでは、12日に政府軍とTPLFの間で戦闘が発生し、政府軍が町を「解放」した。住民は、この時、町への砲撃は北の方角から予告なく行われたと話しており、エリトリアがヒメラでの攻撃に参加した疑いがある。しかし、エチオピアとエリトリア双方の政府はこれを否定している。
TPLFは、エチオピアとエリトリア政府双方への報復として、13日にエチオピアのアムハラ州の町へ、14日にエリトリアの州都アスマラに向けてロケット砲を発射した。これにより、爆撃を受けた町の空港周辺が損壊を受けたとみられているが、被害の程度は不明である。
15日以降、政府軍は州の南部および北部の町に進軍し、TPLFの抵抗を受けながら、これらの町を制圧したとみられる。その後、23日に、政府は、州都メケレを戦車部隊で包囲したと発表し、TPLFに対し72時間以内に降伏しなければメケレ攻撃に踏みきるという最後通牒をつきつけた。政府発表によれば、この72時間の間に数千人のTPLF兵士が投降したという。
政府軍は、攻撃の標的はTPLFのリーダーであり、メケレの市民ではないとしているものの、実際に戦闘が始まれば市民への影響は避けられないだろう。国連は、政府軍がメケレを攻撃すれば、戦争犯罪が起きかねないと警告している。仮に短期間で州都での攻防戦に決着がついたとしても、それによりティグライ州全域における戦闘自体が収束するのかは不明である。スーダン東部に避難したエチオピア難民は4万人に達しており、政府軍がメケレ攻撃に踏みきれば、難民や国内避難民の増加は避けられないとみられる。