不正疑惑の大統領選挙による選出から半年以上が経過し、コンゴ民主共和国のチセケディ政権が徐々に動き出した。組閣が正式に発表されたのは9月3日のことで、66人の閣僚(大臣、副大臣)のうち、前大統領カビラ派のFCCが43人、チセケディのCACHが23人を占めた。議会や州政府でFCCが圧倒的多数を占めることを考えればこの結果は当然で、むしろCACHが約3分の1の閣僚ポストを得たことは健闘と言えるかもしれない。この間チセケディは、何とか独自色を出そうと努力してきた。政治犯を釈放し、治安警察ANR(Agence Nationale de Renseignement)を解体し、カビラ派のANR長官を更迭した。一方で、最大の鉱山企業Gecaminesのユマ(Albert Yuma Mulimbi)長官を続投させるなど、カビラ政権期との連続性もまた明白である。
チセケディの戦略として見えてきたのは、欧米諸国との関係を改善し、自分の政治的スペースを広げるというものである。9月16日から4日間にわたるベルギー公式訪問でも、関係改善に向けて様々な策が講じられた。カビラ時代には、EUや米国がコンゴ人政治家に制裁措置を課し、コンゴ側もEUの事実上の領事館を閉鎖するなど、両者の関係は緊張していた。しかし、今回の訪問においては、ルブンバシのベルギー領事館再開、アントワープのコンゴ領事館再開、経済協力の再活性化などが約束された(9月17日付RTBF)。チセケディは既に4月に訪米してポンペイオ国務長官と会見し、在コンゴ米国大使と親密な関係を維持しているとの報道もある(2019年5月6日付ルモンド)。
チセケディは、最近のルモンド紙とのインタビューのなかで、「自分にとっての優先事項はコンゴ人の生活水準を改善することだ。自分にはあまりに多くの仕事があり、過去の意趣返しをしている暇はない」と語っている(9月22日付記事)。カビラ派が強い影響力を保持していることを認めつつ、そのなかで少しでも事態を改善しようと努力する姿勢を印象付けようとしているようだ。この戦力がいかなる効力を発するか、しばらく注目したい。