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今日のアフリカ

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エリトリアへの国連制裁解除

2018/11/15/Thu

11月14日、国連安保理は全会一致でエリトリアに対する制裁解除を決定した。エリトリアに対しては、2009年、ソマリアのアルシャバブを支援している疑いで武器禁輸、資産凍結、要人へのビザ発給停止などの措置がとられてきたが、今回の安保理決議によりこれらの制裁が解除された。決議は英国から提出されたが、14日付ルモンド紙によれば、安保理の非常任理事国であるエチオピアが7月以降制裁解除を求めていたという。当然ながら、今回の決議の最も重要な背景はアビィ政権の誕生によるエチオピアとエリトリアの接近である。
 アビィ政権の誕生以来、アフリカの角地域をめぐる国際情勢は劇的に変化した。両国の緊張緩和がエリトリアのソマリアに対する態度を変えたとすれば、もちろん望ましいことである。一方で、今後の見通しを考えるために、いくつか留意すべき点がある。
 第一に、エリトリアの内政である。1993年の独立以降、エリトリアではイサイアスが国家指導者を務め、 「民主主義と正義のための人民戦線」People's Front for Democracy and Justice (PFDJ) による一党独裁体制が敷かれてきた。反政府勢力は弾圧され、過酷な人権侵害が大量の移民流出の原因にもなってきた。野党への弾圧を正当化する最大の理由は、「隣国エチオピアの脅威」であった。両国の関係が悪いからこそ、国内で締め付けが可能だったわけである。今後、イサイアス政権が民主化を迫られることは確実だが、どのように対応するかが問われることになる。
 第二に、アフリカの角をめぐる国際情勢、特にアラビア半島諸国との関係である。11月6日付のInternational Crisis Groupのレポートでは、アラブ首長国連邦(UAE)とアフリカの角地域の関係が分析されている。それによれば、UAEとサウジアラビアはイエメン内戦を巡る思惑からエリトリアに接近した経緯があり、またアッサブ港(エリトリア)の権益はジブチやソマリア、ソマリランドとの間に複雑な関係を生み出している。エチオピア経済の拡大、そしてそのエリトリアへの接近によって、アッサブやベルベラ(ソマリランド)の港湾が栄えることに対して、ジブチやモガジシオ(ソマリア)は快く思っていない(10月30日付「今日のアフリカ」も参照)。また、ソマリアの現政権がカタールから支援を受けているため、UAEがその反政府勢力に接近するという構図もある。今回の制裁解除も、この地域に複雑な影響を与えることになるであろう。