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今日のアフリカ

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ボロレ事件(フランス・アフリカ)

2018/04/27/Fri

 アフリカで手広く事業を展開するフランス人実業家ヴァンサン・ボロレ(Vincent Bolloré)氏が、24日警察の事情聴取を受け、翌日には公式な審問が行われることとなった。フランスの刑事訴追では起訴の一歩前の段階ということである。ボロレ氏は、家族による持株会社を通じて、多くの企業に影響力を行使している。企業グループはアフリカで大規模な事業を展開しているが、特に輸送、ロジスティックス事業は大規模で、アフリカ全体で16の港湾でコンテナ・ターミナルを操業している。また、自身のグループが最大株主となっているグローバル・メディア企業Vivendi社を通じて、TVチャンネルの「カナル・プリュス」(Canal +)を配信している。フランスや仏語圏アフリカ諸国を訪問した方なら、一度は見たことのあるチャンネルだろう。今回の事件の容疑は、ボロレ氏の家族持株会社の一部であったコンサルタント企業Havas社が、トーゴとギニアの首都港湾事業をボロレ・グループの企業が受注する見返りとして、大統領選挙におけるコンサルティング業務を安価で請け負ったというもの。トーゴのフォール・ニャンシンベ(現大統領)とギニアのアルファ・コンデ(前大統領)はいずれも、2010年の大統領選挙の際にHavas社のコンサルティングを受けている。アルファ・コンデは大統領に就任後数週間にして、2008年にボロレのライバル企業であるNecotransグループの子会社に与えられたコンテナ・ターミナルのコンセッション協定を一方的に破棄した。トーゴでは、ボロレ・グループは港湾コンセッションを2001年(エヤデマ時代)に獲得し、フォールは2010年3月に再選された2か月後にボロレ・グループの子会社にコンテナ・ターミナル操業の独占権を新たに与えている。この件に関して2016年にルモンド紙のインタビューを受けたコンデは、「ボロレは私の友達だ。自分は友達を優遇しただけだ」と答えている(以上の情報は、24日以降のファイナンシャル・タイムズおよびルモンドによる)。
 ボロレ氏の弁護士が言うように、彼はまだ有罪宣告を受けたわけではなく、真相はこれから明らかにされるのだが、最近報道された様々な事件とも共通点を持つ、今日的な事件である。ボロレ氏がアルファ・コンデやフォール・ニャンシンベ(父親のエヤデマからの付き合いだという)と個人的に深いつながりを持ち、それに基づいて企業展開をしてきたことは、典型的なフランス・アフリカ関係(「フランサフリック」)と言える。また、大統領選挙にコンサルタント企業を通じて食い込んでいることは、ケニアの大統領選でケンブリッジ・アナリティカ社が果たした役割を、仏語圏アフリカではフランス系の企業が行ったことを示す。アフリカの大統領選挙は、欧米のコンサルタント企業の手を借りて行われるようになっているのである。