年末の2025年12月26日、イスラエルがソマリランドを承認した。1991年以来、ソマリアからの分離独立を宣言してきたソマリランドだが、正式に承認したのはイスラエルが初めてである。理由については、ガザ地域の住民を送致する計画があるとも言われるが、ソマリランドの地政学的重要性が指摘されている。イスラエルはソマリランドとの関係を深めることで紅海へのアクセスを確保し、対岸のイエメンで活動するフーシ派勢力の抑制を目論んでいる。
この動きに対応してか、アラビア半島からアフリカ北東部にかけての情勢がいっそう流動化している。12月30日、UAEからイエメンの南部暫定評議会(STC)向けに運搬された武器の積み荷をサウジアラビア主導の連合軍が攻撃し、UAEとサウジアラビアの緊張関係が顕在化した。1月9日、STCは解散を表明し、サウジアラビアへの協力を約束したものの、その指導者のイエメンからアブダビへの出国をめぐって、サウジアラビアはUAEを批判している。
UAEは近年北東アフリカに深く関与し、スーダン内戦では準軍事組織RSFを支援してきたほか、エチオピアやソマリランド、プントランド、ケニアなどとも深い関係を構築した。こうしたUAEの動きをサウジアラビアが警戒し、対抗姿勢を強めている。
12月中旬、サウジアラビアはスーダンのブルハーンをリヤドに招き、SAFを資金的に支援することを約束した。1月7日にはサウド外相がワシントンでルビオ国務長官と会談したが、同じ日に外務副大臣がポートスーダンを訪問している。
SAFは、サウジアラビアの他にエジプト、トルコ、カタールの支援を得ている。その一方で、RSFをUAEが支援し、リビア(ハフタル将軍派勢力)、チャド、エチオピア、ケニアなど周辺アフリカ諸国がその背後につく形になっている。
サウジアラビアはエリトリア支援にも動いており、2025年には、イサイアス大統領を二度招待した。紅海進出に強いこだわりを持つエチオピアへの対応措置とみられ、エチオピアの背後にいるUAEを意識した動きでもある(1月10日付ルモンド)。
北東アフリカからアラビア半島にかけては、複数の紛争が重なり合っている。スーダン内戦とイエメン内戦を筆頭に、ナイル川をめぐるエジプト、スーダン、エチオピアの対立、エチオピアとエリトリアの緊張、ソマリア連邦政府と分離勢力(ソマリランド、プントランド)の対立、リビア紛争(暫定政府と国軍派勢力)が相互に影響し、さらにエチオピア、南スーダン、チャド、中央アフリカなど、いずれも国内に紛争を抱えている。このように重なり合う紛争に、中東諸国の対立が反映し、拍車をかけているのである。(武内進一)
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