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今日のアフリカ

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米国の「不法移民」送還と入国制限

2025/08/09/Sat

 5日、ルワンダ政府報道官は、ルワンダが米国との間で、250人の強制送還者受入れで合意したと発表した。合意は6月になされ、米国はすでに10人の追放予定者リストを提出しているた(8月5日付New Times)。ルワンダは同様の協定を英国とも結んだが、2024年のスターマー労働党政権発足に伴って、英国側が履行を取りやめた経緯がある。

 トランプ政権は、アフリカ各国に「不法移民」の受入れを迫っている。既に7月、南スーダンとエスワティニに強制送還したし、7月9日にアフリカ5ヵ国(セネガル、ギニアビサウ、リベリア、ガボン、モーリタニア)の元首をホワイトハウスに招いて昼食会を催した際にも、「不法移民」の受入れを打診した(7月10日付ルモンド)。

 一方で、トランプ政権は、アフリカ諸国からのビザ発給に厳しい制限を加えている。6月以来、チャド、コンゴ共和国(ブラザヴィル)、赤道ギニア、エリトリア、リビア、ソマリア、スーダン、シエラレオネ、トーゴ、ブルンジといった国々について、ビザ発給停止を表明している。

 8月5日には、ザンビアとマラウイからの観光、商用ビザ発給に際して、最大15,000ドルの供託金を要求すると米国国務省が発表した。7日には、ジンバブウェの米国大使館が、ビザ発給を一時停止すると発表した。

 ザンビアとマラウイへの措置について、米国国務省側は、オーバーステイの比率が多いとの理由づけをしている(8日付ルモンド)。2024年8月に米国国土安全保障省の報告によれば、2023年のオーバーステイの比率はザンビアが11.11%、マラウイが14.32%であった。しかし、両国とも滞在者の総数が少ないので、オーバーステイ者の絶対数は多くない。2021年に、ザンビア人は398人、マラウイ人は388人であった。同じ年、コロンビアのオーバーステイ比率は4.33%だが、その絶対数は4万人以上に達する。同じアフリカでも、2023年のケニア人のオーバーステイは1600人(比率は7.88%)だった。

 ジンバブウェのビザ発給停止について、米国国務省側は、「不法移民」の受入れを拒否したことを背景要因に挙げている(8日付ルモンド)。

 トランプ政権はアフリカ諸国に対して、アメリカの利益になることを何かしろ、そうでなければ何も与えない、という論理で臨んでいる。むき出しの現実主義外交は、どのような世界を生み出すのだろうか。(武内進一)

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