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今日のアフリカ

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米国が南スーダン、エスワティニに「不法移民」を移送

2025/07/19/Sat

 7月15日、米国は、エスワティニ(前スワジランド)に対して、ベトナム、ラオス、イエメン、キューバ、ジャマイカの国籍保持者5人を送還した。これらの人々は、本国が引き取りを拒否した「犯罪者」だと、米国側は説明している。

 これに先立つ、7月4日、トランプ政権は南スーダンに8人の「不法移民」を送致した。8人のうち南スーダン国籍は1人だけで、残りはミャンマーやキューバの国籍保持者である。

 米国では6月に最高裁が、「不法移民」を強制送還する際、出身国が受け入れを拒絶した場合には「第三国」に移送することを認めた。これが南スーダンとエスワティニへの移送につながったのだが、この2ヵ国だけでなく、多くのアフリカ諸国がトランプ政権から「不法移民」の受け入れを持ちかけられている。

 7月9日、セネガル、ガボン、モーリタニア、リベリア、ギニアビサウの大統領がホワイトハウスに招かれた。トランプはそれぞれの大統領と面会し、鉱物資源取引を協議したが、ここでも「不法移民」の受け入れについて打診された模様である(10日付ルモンド)。

 また、ナイジェリアの外相は、国外追放処分となったベネズエラ人を受け入れるよう、米国から圧力を受けたと認めている(11日付ファイナンシャルタイムズ)。同外相は、既に様々な問題を抱えているナイジェリアにとって、そうした受け入れは困難だと述べた。

 こうした動きにアフリカ側から反発の声が上がるのは当然だ。エスワティニの市民社会勢力からは、我々は米国の「ごみ箱」ではない、という批判がでている(17日付ルモンド)。

 一連の動きは、トランプ政権がアフリカを必要としていることを意味している。鉱物資源や移民問題などをディールの材料として、米国はアフリカに接近している。援助を大幅に削減したトランプ政権は、アフリカとの関係を切断するのではなく、ディールに基づく別の形での関係を構築しようとしている。(武内進一)

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