チャド湖の拡大が報じられている。チャド湖は、ナイジェリア、ニジェール、チャド、カメルーンの4ヵ国と国境を接し、アフリカではヴィクトリア湖、タンガニーカ湖、マラウイ湖に次ぐ大湖である。
チャド湖は縮小を続けたことで知られるが、近年の多雨を受けて水面が上昇している(7月31日付ルモンド)。1960年代には29,000平方キロあったチャド湖は縮小を続け、1990年代には10分の1に縮小して消失が懸念される事態となった。しかし、近年は逆に、海水温上昇の影響を受けてサヘル地域の降雨量が増加し、ナイジェリア、ニジェール、チャド、マリなどで毎年のように洪水被害が報じられている。
チャド湖は水深が浅く、水量の変化が面積の変化に反映しやすい。近年の湖水面積の拡大は、牧畜民の放牧地を縮小させ、土地をめぐる農耕民との対立を激化させている。さらに、船を使って攻撃するボコハラムの活動活発化が報じられている。
サヘル地域では、近年の気候変動の影響が様々な形で政治経済に及んでいる。チャド湖は4ヵ国に跨がり、ボコハラムをはじめとする武装勢力の活動が盛んであることから、注意深く観察することが必要である。(武内進一)
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